叡王戦七段予選の村山慈明七段vs藤井聡太七段にて、村山七段が指した取られる馬を放置して、定跡化された放牧定跡。
ただ、先後どちらがいいのかの結論は出ていませんし、藤井七段も後手を持って同じ変化に踏み込んだりもしていますので、藤井七段は後手を持っても指せると見ているということだと思います。
そこで、角換わり腰掛け銀の最新形、放牧定跡を見ていきたいと思います。
放牧定跡の手順
先後ほぼ同型の腰掛け銀へ
まずは、2九飛・4八金型、8一飛・6二金型の先後ほぼ同型の腰掛け銀に組みます。
ここで、△4四歩を突けば先後同型になりますが、放牧定跡は4四歩は突きません。
△5二玉~△4二玉と一人千日手。
その間に先手は▲7九玉~▲8八玉と玉を矢倉に入場させます。
一度▲6九玉を経由して、一手損する形もありますが、放牧定跡は手損せずに矢倉に入ります。
後手が先に仕掛ける
▲8八玉と玉が入場したところで、△6五歩と後手が先に仕掛けます。
後手は一人千日手をして、玉が入場するのを待っていたということですね。
矢倉に入場したほうが硬いんですが、飛車道に入りますので、入ってもらったほうが逆に攻めやすいという考えですね。
△6五歩に▲同歩△同桂▲6六銀△6四歩と自然に進みます。
後手の攻めをけん制
先手としても、一方的にやられるわけにはいきませんので、後手の攻めをけん制します。
それが▲4五歩です。
次に▲4六角と打つことで、▲6四角と出れれば桂馬が取れる形ですし、△6三銀と引いてくれれば攻めが緩和します。
△8六歩から飛車先を交換して、▲4六角には△6三金と強く金をあげます。
激しい攻め合い
後手も一歩も引きませんので、先手も攻めにいって、攻め合いに突入します。
先手の反撃は▲2四歩の突き捨てから入ります。
△同歩ですと、▲2五歩の継ぎ歩ですね。△同歩▲同桂△2二銀と引かせられれば、攻めが厳しくなります。
とはいえ、それもないわけではないですが、継ぎ歩させないために△2四同銀と取ります。
そこで▲5五銀左とぶつけていきます。
△同銀▲同角△5四金▲1一角成△3三桂。
馬を見捨てる放牧定跡
▲3三桂と桂馬を活用しつつ、飛車の横利きを通して、馬取りに当てる味の良い手ですね。
▲1二馬と逃げるのも自然ではありますが、それですと馬の働きが弱くて、いてもいなくてもあまり変わらないので、取られてもいいというのが放牧定跡ですね。
馬よりも駒の働きがいい桂馬を狙って、▲6六歩と打ちます。
ここからどうするか?が課題ですね。
放牧定跡からの変化
馬を取る変化
一番考えてみたい手は△1一飛と馬を取る手ですよね。
当然歩を打った以上は▲6五歩と桂馬を取る一手ですね。
△同歩は▲4六桂△6四金▲3四桂△5二玉▲6九飛と攻められます。
なので、△同歩とは応じずに△8六歩▲同歩△8五歩と継ぎ歩するのがいいようです。
▲同歩ですと、△6五金▲同銀△同歩で、次に△8六歩を狙っていきます。
先手は▲2六桂と先に攻めてどうかです。
50点ぐらいの全くの互角ですので、これも一局のようです。
藤井七段の変化
藤井七段は取らずに△7五歩と攻め合いにいきましたね。
▲6五歩△7六歩▲6四歩で、△1一飛と馬を取って、▲6三歩成。
△8一飛▲4六桂△3一玉▲3四桂。
藤井七段でも分からなかったといっていたこの局面ですね。
ソフトでも全く分かっていないようで、△6六角で後手良しから悪いまで、揺れ動いています。
点数でいうと、+500~-200ぐらいですね。
ただ進めていくと先手が勝ちになりますので、これは先手がいい変化なのかもしれません。
とはいえ、ソフトといえども全部が見えているわけではないと思いますし、今後どうなるかは分かりません。