横歩取り4五角戦法について解説します。
4五角戦法の基本的な流れはこちらです。
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横歩を取った先手に対して、角交換してから、4五角と打つので、4五角戦法と言います。
飛車取りなので、▲3五飛と逃げると、△3七角成▲同金△8八飛成と角と銀交換ながら、龍が作られていますので、後手有利です。
4五角を打つ前に、△2八歩と歩を捨てたのは、▲同銀と取らすことで、先手の陣形を乱すためですね。
これを打たないで、△4五角といきなり打った場合、▲2四飛△2三歩▲2八飛と飛車が戻ります。
△6七角成としても、▲同金で、△8八飛成には、▲同飛があるので、これは失敗です。
棋譜
第34期棋聖戦本戦準決勝 加藤一二三vs谷川浩司
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1979年5月15日とすごい年代を感じる棋譜ですが。
プロ間では、4五角戦法は、先手の勝ちと結論が出てしまっているため、もう指されないので、仕方ないですね。
とは言え、アマチュア間では指されますし、横歩取りをする場合、知っておくことをオススメします。
定跡
4五角戦法の定跡はこういった感じです。
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先ほどの棋譜と同じような感じですね。
この定跡について、解説したいと思います。
▲2八飛と戻れればいいんですが、銀がいて戻れませんので、▲7七角と打って、飛車を取り合いに行きます。
これに、△2四歩▲8六角と単に飛車を取り合った場合、歩損な上、▲5三角成も残ってて、これは後手不利です。
そのため、△8八飛成と銀を取って、▲同角とさせてから、△2四歩と飛車を取り返します。
これに対し、先手は、▲1一角成と馬が作れるので、銀を取られても問題ないという主張ですね。
後手としては、馬が働いては面白くありませんから、△3三桂と跳ねて、馬を働かせないようにします。
先手は、馬を使っていきたいので、△3六香として、桂馬との2枚替えを狙います。
歩がないので、これが受からないわけですね。
後は、先ほどの棋聖戦のように△同角もありますし、△6六銀と、無理やりこじ開けていく手もあります。
6六銀を▲同歩と取ってしまうと、△7八角成で、後手が有利ですので、▲3三香成として、攻め合います。
もっと厳しくいくのであれば、△8七銀もあります。
▲同金は、△7九飛が厳しいので、▲7九金と引きます。
その後は、△6七角成▲3三香成で一局です。
これが基本的な定跡なんですが、いくつか変化がありますので、そちらも見ていきましょう。
変化1:△6七角成
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▲2四飛に対して、△2三歩と受けるのではなくて、△6七角成とした場合。
▲同金△8八飛成▲2一飛成と攻め合いになりますね。
△8九龍には、▲6九歩と底歩で受けます。さらに、△5五桂と攻めて、これも手抜けませんので、▲6八金と引きます。
△6七銀と打って、▲同金は△同桂成が厳しいですし、放っておくのも、△6八銀が厳しいので、▲5八金寄と金を寄ります。
△同銀成▲同金は次が続きませんので、△8八龍と龍も効かせますが、▲6八桂で、次が続きません。
変化2:▲3五飛
△4五角と打ったときに、▲2四飛ではなく、▲3五飛と引く手もあります。
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△6七角成には、▲7七角か▲7五角と打ちます。
▲7七角から見ていきますね。
これに△同馬は▲同桂で、次が続きません。
それでも、局面が落ち着いて一局なんですが、超急戦には物足りないかな? という感じです。
なので、△7八馬と金を取ります。
△8八馬と銀を取ると、▲5三角成に▲3二飛成△同銀▲4二金で詰んでしまいますので、△4二金打と馬取りの先手を取りながら受けます。
これには、▲6一歩があり、△5三金▲6一歩成△同玉は、金が上ずってて、陣形が悪いので、後手不利です。
△同銀には▲同馬△同玉とすると、▲8二飛と王手馬があります。
そのため、△同金と取るんですが、今度は▲8五飛が厳しいですね。
なので、△8八馬と銀を取るのではなく、△8九馬と桂馬を取るのがいい手です。
そこからは、同じように▲5三角成△4二金打となります。
ここで、▲6二歩と打っても、あまり効果がないので、▲6三馬と桂馬取りに当てます。
この状態であれば、銀が取れますので、△8八馬として、▲8一馬と桂馬を取って、攻め合います。
これで、一局という感じですね。
局面を戻しまして、△6七角成のときに、▲7五角とした場合。
△7六飛と横歩を取るのは、▲6七金と馬を取られて、角は飛車のヒモがついていて取れませんので、これは後手不利です。
ですので、△8八飛と引きます。
▲6七金には、△8八飛成と銀を取って飛車が成ります。
銀取りにあたっているので、▲6八金と引いて、△8九龍▲6九歩と進みます。
浮かむ瀬は、ここで一度手を戻すのがいいと言っていて、△4四銀や△3三桂とするのがいいようです。
この変化は、浮かむ瀬は後手持ちで、400点ぐらい良いようです。
実戦的には、まだまだ難しいですが、後手の方が指しやすいように見えるんじゃないでしょうか?
龍を作っていて、先手陣の陣形は乱れているのに対し、後手陣は、ほとんど乱れていませんので。
もちろん、先手が指せそうであれば、相手に4五角戦法をされたときに、こっちの変化に持っていくのも手です。
4五角戦法のオススメの対策
個人的に、オススメの4五角戦法に対して有力だと思っている対策について、お伝えしたいと思います。
それがこちら。
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△2八歩と打たれたときに、▲7七角と飛車と香の両取りに当てるわけですね。
ここで、後手としての手は3通り。
両取り逃げるべからずで、△2九歩成と攻めあってくる手。
△8八飛成と飛車を切ってから、歩を成ってくる手。
△7六飛と横歩を取りつつ飛車が逃げる手。
これらについて見ていきたいと思います。
△2九歩成
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△2九歩成には、▲8六角と飛車を取る一手です。
△3八とと銀を取った場合、▲同金と一度手を戻します。
ここからは、△5二玉などして、守る必要がありますが、▲8四飛と回って、△8二歩と打たせて、歩切れにできます。
後は陣形整備して、隙ができるのを待つ感じになります。
角・銀・桂だけですと、後手からの攻めはなかなか厳しいと思います。
△8八飛成
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△8八飛成は▲同角と取って、△3九歩成には、▲1一角成と攻め合います。
△1九とと香車を取る手は甘いので、△3九とと銀を取ってきますが、ここは、▲同金と手を伸ばします。
ここで、後手からの攻めが続かなくなります。
△2五角の飛車取りと角成が見えるんですが、これには、▲3二飛成と飛車を切ってしまって、△同銀▲5五飛が厳しいですね。
△4七角成は、▲5三飛成で、詰みですね。
以下△5二金▲4二金△6一玉▲5二龍まで、です。
なので、5三の地点を守るしかないんですが、▲2五飛と角が取れます。
後手は飛車を持ってはいますが、金が働いていて、案外打つ所がないんですよね。
先手は、飛車成りも残っていますし、△2三歩と受けるのであれば、▲8五飛と回ることもできます。
△7六飛
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△7六飛に▲1一角成は、△7八飛成が厳しすぎますので、▲2八銀と歩を取ります。
それに対し、△2七歩と叩いて、▲同銀とさせて、△4五角の飛・銀取り。
▲2四飛で飛車が逃げつつ、銀にヒモをつけて、一応受かるんですが、△2三歩▲2五飛△3三桂と執拗に飛車を攻めます。
角も取れませんし、飛車が横に逃げれば、銀が取られてしまいますので、▲3三角成と桂馬を取ります。
王手なので、△同金しかありませんが、ここで▲4五飛と角を取った場合、△7八飛成の方が、やはり厳しいです。
なので、▲7七銀と一度手を戻します。
このままですと、飛車角取りなので、△7五飛と飛車が逃げつつ角にヒモをつけます。
それには、▲3六銀とあがって、△同角に▲7五飛と飛車を取ります。
当然、後手は角も取られるわけにはいきませんから、△4七角成と馬を作ります。
このままですと、馬が強いので、▲4八歩と馬に働きかけます。△2九馬と桂馬を取って、一局ですね。
ここを▲4八金とすると、△同馬▲同玉に、△6九角の金取り詰めろが厳しいです。
ということで、この変化が一番難しい将棋になりますね。
なので、4五角戦法を使う場合は、この対応をされるのがいいのではないかと思います。
対策と言いつつ、完全な対策ではないんですが、▲7七角は知っている方が少ないので、うまくいきやすい印象です。
ぜひ試してみてください。