棋王戦挑戦者決定トーナメントで、羽生九段が深浦九段も破った一手損角換わりからの右玉。
羽生九段がかなり有力視していて、ここ一番で使っていますね。
一手損角換わりは、早繰り銀で攻め込まれてしまうということで、廃れてしまいましたが、右玉にすることで、十分指せると羽生九段が証明していますし、これから増えるでしょうね。
そこで、一手損角換わりからの右玉について、見ていきたいと思います。
一手損角換わり右玉のソフト棋譜
floodgateにて、ピッタリな棋譜がありましたので、そちらを紹介します。
AobaZero_w718_n_p800 vs elmo_WCSC27_479_1000k
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エルモが後手番で、一手損角換わりにしました。
AobaZeroは、一手損角換わりに有力な早繰り銀ですね。
少し危ない手
△7四歩に対して、▲3七銀とAobaZeroが上がりました。
△7五歩と突く手があるので、少し怖い手ですね。
▲同歩△6五角で角成りを防ぐことができません。
早繰り銀を指す場合は、考える必要がある手ですね。
当然、AobaZeroも分かっていますし、この筋は大丈夫ということですね。
具体的には▲7八角で8七角成を防いで、△4七角成に▲6六歩と突きます。
これで馬が捕まっていて、△8四歩と逃げ道を作ろうとしても、▲5六歩で逃げ道を封じます。
後は▲5八金右で馬が取れますし、後手からそれを防ぐ手がありません。
なので、△7五歩は突けないということで、△7三桂と跳ねます。
▲4六銀と上がってしまうと、今度こそ△7五歩の筋がありますので、▲7八金と上がりました。
右玉が完成する前に攻める
AobaZeroはエルモが右玉を完成させる前に攻めていきます。
ゆっくりしていると、攻められなくなりますので、攻めるなら今しかないですね。
例えば、▲5八金△6二玉が入っていると、▲2四歩から攻められなくなります。
▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛の後に△4九銀という鋭い手があります。
羽生九段と深浦九段の解説でも、この筋を話していましたね。
▲5九金と引くと、△1五角が痛いですね。
▲3四飛とかですと、△5九角成▲同玉△5八金で終わってしまいますので、▲2八飛と引くしかありません。
△2七歩▲1八飛△5九角成▲同玉△2八金。
▲4九玉△1八金▲同香で駒得はできますが、玉が裸で、と金も作られてしまいますし、先手玉が持たないですね。
ということで、AobaZeroはその前に仕掛けにいったわけですね。
ここで▲3四歩△2二銀と引かすのか▲2四歩から銀交換するのか、どちらがいいかは難しいところですね。
AobaZeroは▲2四歩から交換しにいきましたが、dolphinは▲3四歩のほうが有力と読んでいました。
▲3四歩で300点ぐらい先手が良くて、▲2四歩ですと50点ぐらいのほぼ互角まで戻ります。
もしかしたら、この辺りはソフトでもしっかり読めていないのかもしれないですね。
右玉を指すなら覚えておきたい角打ち
△3六角がかなり厳しい手でしたね。
これは一手損角換わりから右玉を指すのであれば、覚えておいて、損のない手だと思います。
▲5八金は△2七銀で飛車が捕まってしまいますし、▲3八金は△2七歩▲同金△4七角成が入ります。
▲3八飛と田楽刺しのように狙っていくのもありますが、△3五歩と受けられて、次の角成が防げません。
なので、▲6六角から馬を作り合いましたね。
香得になるとはいえ、後手玉が遠いので、後手のほうがいいようです。
AobaZeroの勝負手も冷静に受けるエルモ
▲2二馬と人間でいう勝負手を放って、△同金▲同飛成なら先手がいいですが、△2七歩から飛車を追われて、苦しいですね。
それでも、馬を捨てて飛車を成り込みます。
ここからのエルモのさばき方が華麗で、△5二銀▲4二龍△4一飛とぶつけていきます。
▲同龍△同銀は飛車がさばけて6九飛までの詰めろになります。
▲2二龍と取りましたが、△4九飛成のほうが厳しくて、収集がつかないですね。
右玉も一局だけど受けの力が必要
一手損角換わりから右玉も早繰り銀にされても一局というのが、プロの将棋でもソフトの将棋でも証明されましたね。
ただ、相手の手を見て、反撃する必要がありますし、陣形もかなり薄いので、受けの力は必要ですね。
指しこなすのはかなり大変ですが、指してみるのも面白いかもしれません。