四間飛車に対する急戦、4五歩早仕掛けについて、見ていきたいと思います。
4五歩早仕掛けの棋譜
2003年10月21日第16期竜王戦七番勝負第1局
羽生善治vs森内俊之
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森内九段が羽生竜王に挑戦した1番です。
このときに、森内9段が四間飛車で、藤井システムを見せたのに対し、羽生竜王は、4五歩早仕掛けで対抗しました。
しましたが、森内9段の鉄板流と呼ばれる受けが勝りました。
定跡
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29手目▲4五歩と居飛車側からいきなりつっかけて、開戦するので、4五歩早仕掛けと言います。
これを△同歩と取ってしまうと、▲3三角成△同桂▲2四歩△同歩▲同飛と進んで、次に飛車成りが受かりません。
△2二歩で受かっているようにも見えるんですが、▲3一角と打たれて、攻め込まれます。
これは、居飛車の成功なので、▲4五歩には取らないで、△6三金とじっと陣形を整えていきます。
居飛車としても、▲4四歩と取っても、△同銀で次がありませんので、▲3七桂と力を溜めます。
後手は、△7四歩と待ちの姿勢ですね。
この後は、先ほどの棋譜のように▲2四歩と突き捨てます。これに対しては、△同歩もありますし、△同角もあります。
ここから少しずつ別れていく感じですね。
△同歩
▲2四歩に△同歩と取ると、▲4四歩△同銀▲4五歩と先ほどの羽生-森内戦のように進みます。
これに対して、△5三銀と逃げると、▲3三角成△同桂▲2四飛となって、飛車成りを受けるのが厳しくなります。
そのため、▲4五歩には、△同銀と強く取ります。
これに対して、▲同桂もありますし、▲3三角成もあります。
▲同桂とした場合は、△8八角成▲同玉△4五飛となります。
ここで、▲2四飛と走って、飛車が成れるようにも見えるんですが、玉が8八に動いたので、△3三角の王手飛車があります。
なので、角を打って角を成りに行くんですが、▲2二角には、△3三角と合わせられて、▲同角△同桂で手順に桂馬が跳ねられてしまいます。
王手飛車はなくなりますので、▲2四飛と走ることができるんですが、△6五桂が厳しくなってきます。
▲6六銀と逃げると、△4八飛成と飛車を切られて、▲同金に△4六角と飛車・金両取りをかけられます。
▲2一飛成△6八角成となると、駒の損得的には、飛車と金の交換ですので、先手のほうが駒得ではあるんですが、陣形差がありすぎて不利ですね。
なので、これは先手が失敗です。
そのため、▲2二角と打つのではなく、▲2三角と打ちます。
後手としては、△4四飛と歩を取らせないようにする手もありますし、△2五飛とぶつけて、飛車をさばいてしまう手もあります。
△2五飛とぶつけた場合は、▲同飛△同歩▲3四角成で一局ですね。
△4四飛とした場合は、▲3二角成として、桂馬を取りに行きたくなる所ですが、それには、△6五桂があります。
また、▲6六銀と逃げてしまうと、△4六角が厳しいです。
飛車が縦に逃げると、△6八角成▲同金△4八飛成が入ってしまうので、▲3八飛か▲1八飛と横に逃げるんですが、やはり、△6八角成▲同金となります。
そして、△2七金と打たれるわけですね。
今度はどこに逃げても、飛車が成られてしまいますので、振り飛車優勢です。
そのため、△4四飛には、▲6六歩と桂馬を打てないようにして、一局ですね。
では、▲同桂と取るのではなく、▲3三角成△同桂と角交換する筋を見ていきたいと思います。
▲2四飛と走った場合、△4七歩と叩きます。▲同銀は△4六歩ともう一回叩かれて、▲同銀△同銀▲同銀△同飛は銀損ですので、▲3八銀と引くんですが、△3六銀と出られてしまいます。
▲4八歩には、△3七銀成▲同銀△4五桂と両方の銀取りのふんどしの桂が入ります。
こうなれば、振り飛車気持ちいいですよね。
取られそうだった桂馬もキレイにさばけて、居飛車の攻めもいなして、攻め返せて。
逆に居飛車としては不満しかないですね。
ということで、△4七歩と叩かれたときに、▲5九銀と引きます。
これはこれで、一局です。
▲2四飛と走るのではなく、定跡通り▲8八角と打った場合。
羽生➖森内戦のように、△4三飛と桂馬を受ける手もありますし、△3六銀と思い切って攻めてしまう手もあります。
高美濃がしっかりしているので、角が成られたぐらいでは、崩れないので、問題ないという発想ですね。
当然、▲3三角成と桂馬を取って、△3七銀成と桂馬を取り返します。
▲同銀は飛車が成られてしまいますし、飛車の取り合いは、硬い後手側が有利なので、▲2四飛△4八成銀▲同金△同飛成▲同銀と飛車も切ってしまいます。
このままですと、飛車が取られてしまいますし、逃げても飛車がさばけなくなってしまいますので、今のうちにさばいてしまうのがいいと思います。
少し戻って、△4八成銀を▲同銀と取ると、△同飛成▲同金で、△5九銀の割り打ちが入りますね。
そのため、金から取ります。
この後は、△1五角と打ってもいいですし、浮かむ瀬は、△4七歩と叩いて、▲同銀△5九銀と絡んでいく筋を推奨していました。
これもこれで、一局ですね。
なので、どういった筋でもだいたい一局になります。
どちらが有利・不利はありませんので、好みで使っていくのがいいのではないかと思います。
△同角
それでは、かなり戻りまして、▲2四歩と突き捨ててきたときに、△同角と取った場合ですね。
▲4四歩△同銀▲4三歩△同飛▲2四飛△同歩▲3二角と進みます。
△4二飛▲2一角成△4一飛打と自陣飛車を打ちます。
△5一飛と打ってしまうと、▲4四角△同飛▲2二馬が飛車取りにあたってきます。
ここで、△4一飛打だった場合、飛車にヒモがついているので、問題なくなります。
それに対して、▲3三桂と打ちます。△同銀は▲同角成△4八飛成▲同銀△2一飛と進みます。
これはこれで、悪くないですね。
どちらも指せます。
ただ、せっかく押さえ込めそうな馬をさばいたという点では、振り飛車側に不満が残るでしょうか。
それに、飛車も2一に行ってしまって、使いにくくなってしまっていますし。
ということで、▲3三桂に対して、△5一飛と逃げます。
ここで、郷田新手と呼ばれる▲9五歩があるわけですね。
△同歩▲同香△同香であれば、取った歩を▲4三歩と打ちます。△5二飛と逃げる一手ですが、▲4四角と銀が取られてしまいます。
香と銀の交換で、居飛車が満足ですね。
まだまだ難しいところではありますが。
▲9五歩を取らずに、△5五歩と角道を止めるのも有力ですね。
▲9四歩と取り込んで、△9六歩▲同香と香を吊り上げて、△3三銀と桂馬を取ります。
▲5五角と銀取りにあてます。△同飛なら、馬が取られないで済みますし、△4四銀なら▲4三歩と打てますね。
また、△4四歩なら、▲4五桂と桂馬の応援も効きます。
ということで、△2一飛と馬を取って、▲3三角成と銀を取ります。
これがまた飛車あたりになってるのが辛い所ですね。
かなりの駒損の攻めではありますが、端攻めも残っていますし、居飛車の攻めがつながりますので、居飛車有利です。
4五歩早仕掛けの対策
これまで4五歩早仕掛けを見てきましたが、どの変化でも、だいたいどちらも指せる変化だと思います。
成功しても、圧倒的な差がつくわけではないので、そこまで警戒する必要もないかな、と思いますが、攻められるのは嫌なものですね。
ということで、4五歩早仕掛けの対策を見ていきたいと思います。
4五歩早仕掛けの対策はいたって簡単で、△5四歩をつかないことです。
このときに、△5四歩ではなくて、△6四歩であれば、4五歩早仕掛けはできません。
もし、▲4六歩と来ても、△5四銀とあがれば、受かるからですね。
▲4五歩には、△同銀で全く問題ありません。
なので、先手としては、▲3七桂と跳ねて、力を溜めるんですが、今度は△6五銀と出て、7六歩を狙います。
これが玉頭銀ですが、居飛車側からすると、玉の頭に銀がいるので、怖いんですが、意外と受ける方法がありません。
▲7七金とするのは、形が悪い上に、角道も止めますから、攻めも守りも弱くなります。
▲7五歩と伸ばしても、歩が取られることが問題ではなくて、玉頭銀が問題なので、あんまり問題解決になっていません。
むしろ、7五歩が負担になって、玉頭銀を▲7七歩と打って、追い返せなくなるので、取らせてしまったほうがいいです。
また、△6五銀のときに、▲4五歩と攻めることもできますが、それには△4三金で受かります。
▲4四歩△同金▲4五歩△4三金▲3三角成には、金ですので、△同金と取れるので、全く問題ないですね。
金が玉から離れてしまいますが、居飛車から攻める手がないので、それも問題ないのではないかと思います。
なので、4五歩早仕掛けには、△5四歩とつかなければ、問題ないということですね。
ただ、▲4六歩と突かれる前に、△5四銀と上がってしまうと、▲3五歩△同歩▲4六銀という斜め棒銀があります。
△3六歩と歩が逃げても、▲3五銀と出られて、2筋を突破されてしまいますので、ここは注意が必要です。