先手の早石田に対して、後手の居飛車が△4二玉とし、▲7八飛と回った乱戦について、見ていきたいと思います。
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この変化ですね。
この変化を回避するためには、先手の早石田側としては、5手目▲7八飛の前に▲6六歩と角道を止めます。
これで角交換される筋はなくなりますので、角交換して、△4五角といった手がなくなります。
後手の居飛車側としては、角交換しないことですね。
6手目に△7二銀とあがって、7筋を支えます。
これは穏やかになる展開ですね。
今回は、この穏やかな展開ではなくて、△4五角と打って、乱戦になったときですね。
このときに、どう対応すればいいのか? ということを見ていきたいと思います。
プロ棋譜
こういうときはやっぱりプロの棋譜を参考にするのがいいと思います。
ということで、
2011年5月10日に行われた銀河戦の杉本昌隆vs羽生善治をどうぞ。
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先に角交換していて、先ほどの棋譜とは少し手順は違うんですが、変化は同じですね。
13手目▲7四歩△同歩▲同飛に対しては、△9二飛と対応しています。
もし、△9二飛としないで、△4五馬などとした場合は、▲8二角成△同銀に、▲7二飛という攻め筋があります。
△同金とするしかありませんが、▲同飛成の銀取り王手が受からないですね。
△5二飛には、▲6二金と打たれてしまいます。
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陣形が悪い上に、飛車2枚で攻められますので、これは後手が持ちません。
ということで、これを受ける必要があるため、△9二飛としたわけですね。
この他には、△7三歩という手もプロ間で指されていましたが、最近は一歩節約して、△9二飛と寄ることのほうが多いです。
また、浮かむ瀬との検討の結果、もう一手有力と思われる手がありました。
その手も後ほど紹介したいと思います。
△9二飛の変化
△9二飛と回ったときは、飛車が7筋にいても使えませんので、▲3四飛と歩を取ります。
これがまた桂取りの先手になりますので、△3二金や△3二銀、△2二銀と受けます。
プロの実践例では、△3二金が多いですが、壁金の形になって、玉が動きにくくなるのは気になる所ですよね。
△3二銀とした場合は、角を取られたときに、▲2二角が気になります。
浮かむ瀬は、△2二銀を推奨していました。
プロの実践例でも、△2二銀もあります。
なので、△3二金か△2二銀と受けるのが有力ではないかと思います。
先手としては、▲3六歩として、馬を取りに行きます。
△2六馬と馬が逃げようとすると、▲3五飛と止められます。
△同馬は▲同歩が桂頭に歩が伸びて、次に桂馬に当たってくるのがイヤな所ですね。
杉本vs羽生戦では、先に銀が上がって馬を取りに行っていましたが、狙いとしては同じです。
飛車と馬の交換で、いい勝負といった感じですね。
浮かむ瀬新手!?有力な一手とは
ということで、もう1つの変化を紹介しますね。
おそらく、プロ間では指されていないんじゃないかと思います。
出てきませんでしたので。
また、色んな所を見ても、この変化について言っている方はいらっしゃらなかったので、研究すると面白いかもしれません。
相手が知らないで、こっちだけ知っている変化に持っていければ、それだけ有利に戦えますからね。
特に、早指しの将棋や乱戦の変化においては。
乱戦になると、一手のミスが致命傷になりますから、相手の知らない変化に持っていくのは、かなり有力です。
ということで、見ていきましょう。
この局面ですね。
ここでは、△9二飛か△7三歩と言ったんですが、実はもう一手あったんですね。
それが、△4九馬。
はい。いきなり馬を切ってしまうんです。
当然▲同玉の一手ですが、△6四金と飛車・角両取りを狙いつつ角道も止める一手があるわけです。
▲同角か▲同飛の一手ですね。
▲同角とした場合、▲同飛とした場合、それぞれどう進むのか? 見ていきたいと思います。
▲同角
▲同角△同歩▲同飛で、駒割りは全く同じですね。
後手としては、金にあたっていますので、こちらを受ける必要があります。
受け方は、△6二飛と飛車をぶつけるのが有力ですね。
先手の金が一枚いませんので、陣形的にこちらの方が硬いですし、飛車の打ち込む隙も少ないです。
また先手は飛車が逃げると、飛車が成られてしまいますので、逃げられず、▲同飛成と飛車交換を応じる以外にありません。
△同銀に対して、▲3七玉とあがって、△2七飛の筋を消します。
この陣形をどう見るか? ですね。
個人的には、先手の銀が8八にいるのに対し、後手は6二にいて、後手の方が陣形がいいように見えますが、いかがでしょうか。
ちなみに浮かむ瀬の評価値は100~200点ぐらいの差で、後手がいいようです。
ただ、これぐらいですと本当に互角ですね。
まだまだこれからといった感じです。
▲同飛
続いて、△6四金に対して、▲同飛とした場合ですね。
ちなみに浮かむ瀬はこちらを推奨していますが、こちらもこちらで難しいです。
同じように、△同歩▲同角と進みます。
飛車取りなので、受ける必要がありますね。
△9二飛と逃げると、角がずっと通っていて、飛車が使いにくく、少し後手が悪いです。
なので、△7三歩と受けます。
駒組みを進めて、▲3八玉などとすると、△6二飛と回って、角取りと飛車成りを見せます。
角や金を使って受けてくれるのであれば、こちらの攻めの脅威も減りますから、ゆっくりと駒を組んでいけば問題ありません。
なので、最善の受けとしては、▲1八角です。
これに対して、△6二飛であれば、▲6三金が激痛ですね。
△8二飛なら、▲7四歩として、さらに飛車をいじめられますし、△9二飛なら、▲5三金が、王手と角道も通ってきて、桂馬にあたってきます。
これはもう先手ペースですね。
なので、▲1八角には、△5二金右と駒組みを進めていきます。
これもこれで、一局といった感じです。
ここまで見て頂くと分かるかと思いますが、こちらの場合は、桂頭の傷を抱えていません。
▲3四飛と回ることができないからですね。
なので、桂頭を狙われにくいのも、△4九馬の変化の特徴です。
それに、△9二飛にしても、馬と飛車の交換になることが多いわけですし、それなら先に交換してしまってもいいんじゃないでしょうか。
個人的には、こちらもかなり有力だと思っています。
知っている方も少ないと思いますので、居飛車党の方で、早石田に悩まれている場合は、試されてみてはいかがでしょうか。
逆に石田党に取っては、相手にやられたときに対応を知っている必要があると思いますので、知っておくに越したことはないと思います。