矢倉崩しとして、ソフトが推奨している居角左美濃急戦。
その名の通り、角を動かさずに左美濃に囲んで、一気に攻め潰してしまおうという作戦ですね。
矢倉よりも左美濃の方が手数がかからないので、すぐに組むことができますので、相手よりも先に攻めることができるわけですね。
ただデメリットとしては、矢倉よりも縦の攻めには弱いので、相手から反撃されると逆に攻め込まれて負けてしまいます。
なので、いかに相手より速く攻めて、そのまま攻め潰せるかが重要になってくる戦法です。
居角左美濃急戦は、プロも採用していますし、藤井四段が指したのも記憶に新しいですよね。
かなり有力な戦法ですし、攻めることが好きな方には、ぜひ覚えてもらいたい戦法です。
居角左美濃急戦の定跡
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こういった感じですね。
後手は矢倉は完成していますが、まだ玉は入城できていませんし、角も引けていなくて、攻めの形もできていない状態です。
それに対して、居角左美濃急戦は、囲いはすでに完成していて、銀も前に進出していますから、攻めの形もできています。
ここからは攻めるだけですね。
矢倉側がどうしても手が遅れますので、受ける展開になります。
先手番での定跡を紹介しましたが、後手番でも居角左美濃急戦側の方が手が速くなるので、先に攻めれます。
だから、攻め将棋には打ってつけの戦法になります。
居角左美濃急戦の手順
今、定跡と言いますか、基本的な流れを見ていったんですが、実は居角左美濃急戦は手順がすごい重要になってきます。
手順を間違えると逆に攻められて、負けてしまいますので、手順はしっかり覚えることをオススメします。
▲2五歩は、居角左美濃急戦にする第一歩でもあるんですが、それと同時に、後手に矢倉なのか振り飛車なのかを聞く手でもあります。
ここで、△3三銀なら矢倉の可能性が高くなりますし、△3三角なら振り飛車の可能性が高くなります。
もちろん、可能性が高いだけで絶対ではありません。
△3三銀にしても、△5二飛と回って、矢倉中飛車にする手はありますし、△3三角でも、雁木にする手はあります。
ですが、ある程度予想はできるようになるわけです。
また、矢倉中飛車にされても、左美濃は元々振り飛車には強い形ですので、問題ありません。
なので、△3三銀と上がったら、後手が何してきても左美濃で戦えるのも強みです。
今回は矢倉ということで、△3三銀と上がります。
それに対して、▲4六歩と4筋の歩を突きます。
何でもないような一手に見えますが、この一手がすごく重要で、相手がここでミスしてしまうと、一気に攻め潰すことができる恐ろしい狙いを秘めた一手です。
例えば、後手が銀を繰り出そうと△6二銀と上がったりすると、▲4五歩といきなり仕掛けていきます。
△同歩と取ると、▲2四歩と飛車先も突くんですね。
△同銀は▲2二角成と角が取られてしまいますので、△同歩なんですが、▲同飛と切ってしまいます。
△同銀は同じように▲2二角成ですね。
後手は飛車を持っていますが、先手は馬ができて角も持っていますので、先手が勝ちます。
居角左美濃急戦は何と言っても後手に攻められると危なくなりますので、攻めさせないような駒組みをしていく必要があります。
そのために必要になるのが、この▲4六歩になるわけですね。
銀を前に出られなくすることで、後手の攻め手をなくして、先手だけ攻め手を作っていきます。
2筋が弱いということで、後手は△3二金と上がって2筋に備えます。
▲4七銀と銀を三段目まで上げてから、▲6八玉と上がって美濃囲いに組みにいきます。
ここからは基本的に後手が何してきても、手順は変わりません。
先に▲4七銀と上がっておくのは、後手の銀の進出を阻むためです。
例えば、後手が△6二銀~△7三歩と早繰り銀で来たとしましょう。
その時に、▲5六銀と腰掛け銀にすることで、後手に攻められなくすることができるんです。
▲4七銀から詳しく見ていきますね。
△6二銀と上がってきたのに対して、▲5六銀とすぐに腰掛け銀にします。
△7四歩と突いて銀の進出を図るんですが、先手陣はもう問題ありませんので、▲6八玉と玉を囲いに行きます。
△7三銀に▲5八金右と上がり、△6四銀と出てきたところで、▲6六歩と突きます。
△7五歩と仕掛けてきても、▲6五歩と銀の方を追い返せるわけですね。
△7三銀と引くしかありませんが、▲7五歩と歩得できます。
腰掛け銀にしていることで、6五歩が突けるので、問題ないわけです。
このように後手の攻め筋をなくしつつ駒組みを進める必要があるため、手順は重要になります。
特に▲4六歩と▲4七銀。
この2つは重要になりますので、ここをしっかり抑えることをオススメします。
居角左美濃急戦の対策
居角左美濃急戦の対策は主に2つあります。
1つは△4四歩と突かないことですね。
ここを突くと▲4六歩と突かれて争点が生まれますので、△4四歩は突かなければ、居角左美濃急戦にされても、そんなに怖くありません。
なぜなら、争点がないからですね。
腰掛け銀にして、4筋も絡めて攻めていく戦法ですので、その4筋が攻めれないとなると、かなり苦しくなります。
ただ、△4四歩と突かない形となると、▲7六歩に対して、△8四歩、▲6八銀△3四歩▲7七銀といった形で矢倉にするしかないんですよね。
つまり、相手に断られると矢倉ができなくなります。
特に今は矢倉を指す方が少なくなっていますので、ネット将棋の場合、少し難しい傾向にあります。
その場合は、△4四歩を突いて矢倉を目指すしかありません。
そのときに居角左美濃急戦に対して、どう対策すればいいか? ということなんですが、
それがもう1つの方法で、先に攻めます。
攻めるタイミングとしましては、この▲4六歩と突いたタイミングです。
△6二銀と上がってしまうと、先ほどと同じように攻められてしまいますので、▲8四歩と飛車先を伸ばしていきます。
▲4五歩と攻め筋は、飛車の横利きで角にヒモがついているので問題ありませんね。
先ほどは、銀があがったことで、飛車の横利きが止まってしまったのが問題でしたので。
飛車の横利きが通った状態であれば問題ありません。
なので、先手はすぐには仕掛けられませんので、▲4七銀とためます。
すぐに△8五歩と飛車先をすぐに伸ばしていきます。
▲7七角と受けるのも、なきにしもあらずですが、基本的には居角ですので、飛車先は受けずに▲7八銀と上がります。
飛車先の歩を交換して、△7六飛と横の歩を取るのも有力です。
▲4五歩からの仕掛けも見えますが、飛車がいるので反撃できるので問題ありません。
少し進めてみましょう。
▲4五歩には△同歩と取って、▲2四歩も△同歩▲同飛と走ってきますが、△同銀と強く取ります。
▲2二角成と一見成功したように見えますが、△2六飛と回って、反撃できます。
これが受からないですね。
▲3八銀と引いても、△2七歩と歩が打てますので。
なので、これは後手が指せます。
また横歩を取ったときに、飛車を帰らせないように▲6六角と上がってくるのであれば、△同飛と取ってしまって、▲同歩に△8八角と打ちます。
香と歩の両取りが受かりませんので、これも後手が指せる展開です。
なので、▲6八玉と囲いに行きます。
後手もすぐには攻めれませんので、▲3二金と矢倉にします。
後の展開としては、こちらも銀を繰り出していって、相腰掛け銀のような感じにします。
先手としては▲3七桂と桂馬を使って攻めてくるんですが、後手は△1四歩と突いて、△1三角の端角にして攻め返しにいきます。
例えば、▲4五歩と仕掛けてくるのであれば、すかさず△1三角と上がります。
4筋を突いたので、玉を睨んで、5七の歩が動けない状態になります。
つまり、銀が取れる状態になるわけですね。
▲4七金と上がって受けますが、△4五歩と取っておいて、▲同銀に△6五銀とかわしておいて問題ありません。
ただ、ソフトでは△4四歩を突いた形は左美濃側の方が有利ということで、評価値が高いので、おそらく対策はないんだと思います。
もちろん、もっと強いソフトができて、矢倉側も受けられるというのは十分考えられますが、今の所は左美濃側の方が有利です。
なので、基本的にミス待ちの将棋になります。
とは言え、一手ミスするだけでも、形勢がガラリと変わるほど難しい将棋なので、十分勝ち目はあると思います。