第9回上州将棋祭りの佐藤天彦名人と高見泰地叡王が対局した棋譜です。
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本局は矢倉になりましたね。
最近は硬さよりもバランスで、銀よりも桂馬で手を作るということで、桂馬を速めに跳ねていきましたね。
ただ、4六歩と突いているので、角を引いてもあまり使い勝手がよくならないのをどうするかですね。
高見叡王のほうは、△4二銀と上がった銀をまた下げて、再び角道を通しました。
これも最近ではよくある指し方ですね。
咎めるのであれば、▲2四歩から一歩交換でしょうか。
飛車先交換三の得ありという格言もありますが、最近はそれよりも手損が気になるということで、あまり飛車先の交換は得ではないとも言われてきていますね。
この辺り、どうなるか難しいところですが、ソフトは▲2四歩の飛車先交換を推奨で、50点ぐらいの全くの互角とのことでした。
佐藤名人は▲6七金と上部を手厚くして、攻めに備えましたね。
これも全くの互角で、どちらも自然な一手です。
角交換を望む手も有力だったか
解説の佐藤九段は△1三角と角交換を狙う手を読んでいましたね。
角交換したあとは△3五歩の桂頭攻めが残るので、先手の佐藤名人はどうするかですね。
対局終了後の感想戦で、高見叡王も△1三角のことも話していましたが、香が吊り上がるのが気になるということで、△3一角と引いて角を活用していきました。
佐藤九段もビックリの端攻め
高見叡王は5三に角を持ってきて、△1五歩と守りの香を攻めに活用していきましたね。
さすがの佐藤九段でもこの手にはビックリしていました。
ただ、ここからの高見叡王の構想がすばらしかったですね。
▲同歩△1六歩と垂らして、放っておけば歩成りですし、取れば角成りですね。
ということで、▲2七飛と受けるしかなく、これで飛車の横利きを狭めることに成功します。
△1五香とさらに足していって、▲1八歩と受けさせました。
部分的にこの交換は佐藤名人には損ですが、守りの香が吊り上がったとも見えますので、どうかですね。
9筋からも攻める
高見叡王は9筋からも攻めて、両端から攻めていきました。
▲同香△同角もあったでしょうか。
佐藤名人は感想戦で2六香を気にしていましたが、角さえ退いてしまえば、2六香は打てませんので、問題ないですね。
ただ今度は△8三香があるので、怖いことには変わらないですね。
ということで、▲9七歩と局面を落ち着かせにいきましたね。
高見叡王からはこれで収まってしまってはつまらないですので、こじ開けにいきます。
受けにくい角出
角が覗いて、角成りを見せていきましたね。
佐藤名人は▲6六歩としましたが、感想戦では▲5七歩と打てばまだまだ難しい展開だったと話していましたね。
▲6六歩の場合、銀が引けなくなりますので、△5四歩で▲6四銀とするしかなくなり、△同銀▲同角で△5五銀で角がつかまる形となってしまいます。
本局も△8八歩を入れてからその展開になりましたね。
5七歩だったら、△5四歩に▲6六銀で問題なかったということですね。
後は一直線に高見叡王が寄せ切りました。
投了図
ここで、佐藤名人の投了となりました。
以下、▲7九玉、▲6九玉どちらでも、△6八金で詰みですね。
高見叡王の快勝でしたね。新年早々名人に勝利して、今年はもっと飛躍するかもしれませんね。
佐藤名人からしたら残念でしたが、早指しですし、受けの棋風としては厳しかったですかね。受けの場合は、受け間違うとすぐに持っていかれてしまいますので。
短い時間で、相手の攻め手を全て読み切るのはかなり難しいですし、仕方ない部分もあったのかなと思います。