第77期名人戦七番勝負 豊島将之二冠vs佐藤天彦名人の第4局です。
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本局も角換わり腰掛け銀になりました。
相掛かりになる可能性も少しありましたが、やはり角換わりでしたね。
佐藤名人は名人戦第2局と同様に9筋の位を取らせる指し方にしました。
手得を囲いに回して、豊島二冠が先に攻める展開になりました。
△同歩もありますし、△4一飛もありますね。
佐藤名人は△同歩として、▲同桂△4四銀の展開になりました。
次に桂馬が取られてしまいますので、▲4六歩の一手ですね。
そこで、△6五歩と突いて、次に6四角と打って、豊島二冠の攻めをけん制する狙いです。
豊島二冠は飛車先を切って、2七飛と引きます。
こうすることで、6四角と打たれたときに角の効きより上に飛車がいきますので、角道から逸れることができます。
端のポイントをあげる
佐藤名人は4二に玉が戻って、豊島二冠は▲1五歩と突いていきます。
△同歩▲1四歩と垂らして、△同香なら▲1二角があります。
なので、△5二玉とさらに戻ります。▲1五香△1二歩と受けて、豊島二冠は両端のポイントをあげることに成功します。
佐藤名人もどこかポイントをあげたいですが、まだ手がないということで、手渡し。
佐藤名人でも気づかない角打ち
▲1六角と打たれて攻められる展開になってしまったと佐藤名人は話していましたね。
ツイッターでもこの局面を振り返られています。
名人戦第4局豊島二冠戦。73手目▲16角から攻められる展開になりました。その後は難解で、どこかに代案となる有力手があるのかもしれませんが今はよくわかりません。ただ、109手目▲88玉まで進むと、こちらがまとめづらい将棋になっている気がします。119手目▲22飛が厳しく収拾困難になりました。
— 佐藤 天彦 (@AMAHIKOSATOh) 2019年5月17日
次の▲3四角が玉頭をにらみつつ2三角成も見せて、厳しい手になります。
佐藤名人は△8六歩▲同歩を入れてから、△4三銀と引いて受けます。
ただ、銀が引いたことで、角頭が弱くなったということで、▲6六歩と狙っていきます。
そこからは激しい戦いになりました。
横歩を取る手があったかどうか
ここで、△7六飛と横歩を取るのも有力ではないかと解説で話していましたね。
▲4九角△7五飛▲8四角で飛車は取られてしまいますが、△4五銀▲同歩△6七桂という攻め筋があって、後手も指せるのではないかという話でした。
ただ受け将棋の佐藤名人はこういった切り合いはあまり好まないでしょうか。
△8五飛と引いて、まだ受けに手を回します。
豊島二冠は▲3五歩△同銀▲5五角として、6六の拠点を外して自陣を安全にします。
歩を決めるべきかどうか
ここで、▲3三歩を決めるべきかどうかが悩ましいところですね。
△同桂▲同桂成△同金となるのか、2二金や3一金とかわすのか、どれもありそうです。
豊島二冠は決めないほうが得とみて、▲5五銀と出ます。
佐藤名人は△4五歩と桂馬を取って、咎めに行きました。
桂馬が取られると3三歩は打てませんので、もし打ちたかったとしたら、咎められます。
ただ、▲4五同歩と自然と歩が伸びるので、次の▲4四歩で十分手になるということなんでしょうね。
銀が逃げないほうが良かったか
佐藤名人が角を取り返して、銀取りが残っている局面ですね。
香を渡してしまったので、8六香で飛車が取られる手もあります。
ソフトは、△2五銀と引いて▲8六香と入って、苦しくなったとのことで、先手が+300点ぐらいだったのが8六香で700点ぐらいまであがりました。
△6五飛▲同金△同桂で飛車・金交換で桂馬も使えてくるので、そこまで悪くなさそうですが、▲8八玉と入られて、手が難しかったでしょうか。
△2五銀に代えて、▲8六歩と合わせて△同歩▲同飛として、△8七歩なら▲7六飛で△7七歩で飛車は取られてしまいますが、△6六飛と角が取れるので、それで互角だったみたいです。
隙を全く与えない指し方
ここで、▲2二飛と打って攻めにいくのもありましたが、豊島二冠は▲6八金と何もさせない指し方ですね。
6八金を入れなければ、△3二金▲2一飛成△3一金打▲1一龍△7八角成▲同玉△2一金打と無理やり龍を取りにいく手もありますが、そういった変化もなくせます。
後は、しっかり決めましたね。
投了図以下
ここで、佐藤名人の投了となりました。
以下は△6四同金▲同銀で、玉が挟まれて、受けがありません。
先手玉も詰みませんので、投了やむなしです。
これで、豊島二冠が名人奪取となりました。
接戦の将棋も多かったですが、結果的にストレートで名人奪取で、豊島二冠の強さがより分かりますね。