第45期棋王戦予選の藤井聡太七段と牧野光則五段が対局した棋譜です。
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本局は、牧野五段が一手損角換わりにしました。
一手損角換わりには、早繰り銀が有力とされていますが、藤井七段は一筋の位が取れたということで、腰掛け銀にしたのかなと思います。
ただ、お互いになかなか仕掛けられずにじりじりとした展開になりました。
牧野五段から動いて桂交換へ
牧野五段は6筋から動いていって、桂馬交換に成功します。
藤井七段は▲7七同金の形で取りましたね。
銀のほうが形はいいですが、玉から離れてしまいますので、形を優先するか玉の守りを優先するかになります。
藤井七段は玉の守りを取ったということですね。
また、この桂交換がどちらが得なのかですね。
普通に見れば、攻めの桂と守りの桂の交換ですので、牧野五段のほうが得なんですが、牧野五段にとってこの桂馬が攻めの桂なのか守りの桂なのかが判断しにくいです。
8筋に玉がいれば守りの桂になりますし、2筋に玉がいれば攻めの桂になりますが、玉が中央にいますので、どちらなのかが難しいところです。
ただ、攻めの桂にするために、△4二玉と寄りましたね。
反対に藤井七段は右玉のようにして、最初は牧野五段が右玉でしたが、中盤になって逆になりました。
こういうところも面白いところですよね。
1筋の位を活かす
藤井七段は1筋の位を取ったのを活かして、▲1六桂と打っていきます。
2筋をどう受けるか、あるいは受けずに反撃できるかですね。
感想戦では、△2二金を読んでいました。
▲2四歩△同歩▲同桂が金に当たらなくなります。
なので、▲2四歩△同歩▲1四歩と突いてどうかですね。
△同歩なら▲2四桂と跳ねたときに1二歩からの攻めが狙えます。
牧野五段は△1二桂としっかり受けました。
これで2筋の突破は見込めなくなりましたので、藤井七段としてはまた別の攻めを考える必要があります。
牧野五段としては桂馬を使ってしまったので、攻めが難しくなりました。
決断の角打ち
△7二角と牧野五段は角を打っていきました。4五歩からの攻めをけん制しつつ△3五歩の桂頭攻めを狙った角打ちですね。
ただ、▲3五歩のときに△4五歩もあるので、3五歩が成立するかどうかは難しいところです。
藤井七段は▲2六飛と浮いて受けました。
△3五歩▲同歩△1四歩と突いていきます。
▲同歩なら△1八歩の狙いですね。
なので、▲2四歩△同歩▲2五歩と継ぎ歩。
△1五歩に▲2四桂と跳ねてさばいていきます。
玉頭に拠点ができて、かなり怖い形になりました。
△1四桂▲2五飛△1三桂と飛車を退かしに行きます。
ただ、▲3四桂△同銀直に▲1五飛と寄られます。
▲3六歩で勝負ですね。
飛車捨てからの猛攻
ここで、▲1四飛と飛車を切っていって、△同銀▲同香。
△3三歩と受けましたが、▲2三桂と打ち込んで、全部バラします。
玉を裸にできましたが、攻めの手がかりもなくなってしまったので、どう攻めるかですね。
藤井七段は▲3八桂と馬を攻めにいきました。
牧野五段は△4九銀と打って、▲同玉は△5九飛で詰みですので、▲6八玉△3八銀不成と桂馬を外します。
ただ、これで牧野五段は金駒がなくなってしまいましたので、寄せるのが大変になりました。
急所の銀打ち
▲2四銀が入って、受けが効かなくなりました。
△同香は▲2三金△1四玉▲2四馬で詰みですので、△1四玉と逃げるしかないですね。
▲1五歩から馬を抜かれて、手がなくなりました。
投了図
▲3三角で投了となりました。
すぐに詰みはありませんが、先手玉がしっかりしすぎていて、手がありませんので、投了やむなしですね。