第77期名人戦七番勝負第3局の佐藤天彦名人と豊島将之二冠が対局した棋譜です。
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本局は角換わり腰掛け銀になりました。
豊島二冠は△4四歩~△4一飛と回る変化にしました。
それに対して、▲4五歩と仕掛けにいって、△5二玉▲4四歩△同飛。
▲4五歩と位を取るのも自然ですが、佐藤名人は▲4七歩と低く受けました。
ここだけ見ますと、豊島二冠だけ歩が切れて、ちょっと損した感じがしますが、どうなんでしょうか。
3一玉と囲えなくしたのは大きいということですかね。
△4一飛に▲8八玉と囲っていますので、先手は硬さを主張にするのでしょう。
歩突きの罠
佐藤名人は▲3八金~▲4六歩と突いていきます。
△同飛と一見タダですが、▲4五桂と飛車を帰れなくして、銀取りと4七金の飛車を捕獲する手があります。
△3六飛と金に当てる手はありますが、▲4七銀△3五飛▲3三桂成でやはり捕まってしまいます。
歩を取る手は罠ということで、△8一飛と戻ります。
そこからは、手を作っていくのが難しい将棋になりました。
豊島二冠の積極的な手
先手から動いていくのが難しそうでしたので、豊島二冠が望めば千日手も十分ありそうでしたが、△4四銀と打開しましたね。
佐藤名人は飛車先を切って、豊島二冠も飛車先を突き捨てていきます。
そして、自陣角。
中央から押していこうという狙いですね。
ソフトは▲9五歩と端から反撃できると言っていますが、読みきれないと指せない手ですね。
佐藤名人は▲4五歩と突いて、△5五銀左▲同銀△同角に▲4四角と合わせていきます。
△同角▲同歩は自然と歩が伸びて攻めの拠点になりますので、大きいですね。
ただ、△4七歩の手筋もありますし、この瞬間が怖いです。
豊島二冠は△6五歩と突いて、玉の小瓶を攻めにいきました。
そこで▲5六銀と打って、△6六角▲7七銀△4四角▲同歩となりました。
先手陣を荒らしてから角交換になって、後手としても悪くはないというところでしょうか。
ただ、銀が引けて先手陣もしっかりしましたので、この交換が得だったかどうかは難しいところですね。
直接角を打ち込む!
▲4六角で佐藤名人が玉頭を狙っていって、△6四銀でしっかり埋めて、玉頭戦になりました。
そして、豊島二冠が△5五角と直接打ち込んでいきます。
△2二角から4四の歩を払う手もありそうですが、それだと遅いということでしょうか。
佐藤名人としても取るしかなくて、角銀総交換になります。
手筋の歩打ちからの猛攻
△8八歩はよく出てくる手筋ですが、いつ打つかが難しいですよね。
打たれたら打たれたで、どれで取るかも悩ましいところで、どれで取ってもあんまり味がよくありません。
形的には▲同玉と取りたいですが、△8五桂▲7六銀△6六角という筋が見えていますので、それをどうするかですね。
ソフトは△8五桂を手抜いて▲8四歩で勝負という感じですが、それも難しい展開です。
佐藤名人は▲同銀と取って、壁形になりましたので、△4七銀の手筋から仕掛けていきます。
△3八角に金を助けて、▲7四歩から攻め合いになりました。
どう攻めをつなげるか
ここの局面を佐藤名人はツイッターで振り返っていました。
名人戦第3局豊島二冠戦。序盤からずっと難しい戦いでした。102手目△62玉のところは攻めが細いと思っていましたが、▲52銀からあやを付け、少し持ち直したと思います。その後の終盤もずっと激戦でした。
— 佐藤 天彦 (@AMAHIKOSATOh) 2019年5月8日
手がかりが角だけで、どうやって攻めをつなげるかでしたが、▲5二銀と引っ掛けて、なんとか持ち直したということですね。
なので、この辺りは苦しいと見ていたんでしょうね。
ここから、角は取られますが、と金ができて、成銀と2枚で迫れましたので、先手としても楽しみが出てきたところでしょうか。
終盤の詰むや詰まざるや
ここも佐藤名人はツイッターで振り返っていましたが、詰むや詰まざるやで難しいところでしたね。
131手目▲85桂で▲34角成なら難しかったと思います。このあたりは彼我の詰み筋を細かく読めていなかったので、ミスは残念ですが実力が及ばなかったところかなと感じています。いい内容の将棋が指せたとは思いますがスコアは厳しくなりました。ただやることは変わらないので、また次局も頑張ります。
— 佐藤 天彦 (@AMAHIKOSATOh) 2019年5月8日
ここは佐藤名人も豊島二冠も時間がなくて、正確には読みきれなかったということでしょうね。
▲8五桂に△4八飛成が必至となり、後手玉は詰みませんので、豊島二冠の勝ちとなりました。
ただ、▲3四角成としていれば難しかったと振り返られていますね。
それなら△4八飛成が▲同銀で詰みませんので、先手としても十分指せる展開になります。
投了図以下
ここで、佐藤名人の投了となりました。
▲4八銀は△6八銀成から頭金で詰みますし、何もしなければ、△7八金▲同金△同龍で詰みで、受けはありません。
なので、後手玉を詰ますしかありませんが、▲6三馬としても△9二玉で▲7四馬△8一玉となってしまい、王手の千日手は王手する側の負けとなりますので、迫る手がありません。
最後の最後までどちらが勝つか分からない将棋で、名人戦らしい頂上同士の面白い将棋でした。