第78期将棋名人戦第4局 豊島将之名人vs渡辺明二冠は、相矢倉の脇システムになりました。
渡辺二冠が脇システムに誘導して、1五歩と端の位を取るのが作戦だったとのことです。
そこから難しい将棋で、ソフト的には渡辺二冠がやや有利とのことでしたが、どうなるか全く分からない展開でした。
ただ、豊島名人が悩む展開になり、時間差が次第について、渡辺二冠が押し切る形となりました。
これで、2対2の五分に戻して、どちらが勝つのか全く分からなくなりました。
名人戦第4局の棋譜振り返り
ポイントの局面を中村太地七段が解説してくださっていますので、そちらをご覧ください。
渡辺二冠が銀交換をして、豊島名人が△4九角と打った局面ですね。
棒銀や早繰り銀は銀交換できれば成功と言われていますが、実際はそこからがどう指すのが難しいです。
中村七段が▲4一銀と一気に攻め込む手も解説してくださっていますが、なかなか攻め切れないようです。
そこで、渡辺二冠の指した手は▲3九金!
自陣に金を打って、角を取りにいく手ですね。
終局後に渡辺二冠は、「変な手」だけど、「他に手が思いつかなかった」と話していました。
ただ、豊島名人もこの手を評価していて、「4一角でいい」と思っていたそうですが、「3九金と打たれて分からなかった」と話していました。
実際、3九金はかなり指しにくい手ですよね。
中村七段も解説で話していますが、角は取れますが、6七角成と切る手を狙っていて、切られたときに打った金が遊ぶことが決まってしまいます。
つまり、攻めにも守りにも働かないということですね。
せっかく取った金を全く働かないところに打たないといけないというのは、かなりイヤですが、それでも角が取れれば良いということですね。
具体的には▲6一角と打って、4三の金が取れれば、2三飛成と飛車を成り込むことに成功します。
豊島名人もこれが厳しかったとのことで、△2三銀と受けました。
▲6八飛△6七角成▲同飛と角・金交換になります。
これなら、2三銀も遊び駒になって、攻めにも守りにも働きませんので、お互いに金と銀が遊ぶ展開なので、先手の渡辺二冠としても、悪くないということなのでしょう。
筋悪い手を読みで指す段階に来ているのかもしれない・・・
以前なら、筋の悪い手は読む必要もなく、指すこともほとんどありませんでした。
筋の悪い手というのは、本局でいうなら▲3九金のような攻めにも守りにも働かない手ですね。
持ち駒にあれば、どこにでも打てるわけですから、敵玉を追い詰めたり、自陣を固くするために打ちたい駒です。
それを切られることが分かっている角を取るためだけに打ちました。
今後はこういった手も読む必要が出てきそうです。
見た目は悪くても、それを指すことでそれ以上の成果が得られることを読む段階に来ています。
ソフトが「筋悪い」とか「指しにくい」とかそういうのはお構いなしに示してきますからね。
ソフトでの研究が進めば進むほど、そういった手も読む必要が出てくると思います。
今まで以上に読みの深さが大事になってくるかもしれません。