第78期順位戦B級1組1回戦の菅井竜也七段と永瀬拓矢叡王が対局した棋譜です。
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菅井七段はゴキゲン中飛車の出だしから角交換して、向かい飛車にしました。
5筋の歩を突くことで、4五角から馬を作る手を消すことができます。
その後、すぐに△3三角▲7七角と打ち直しました。
そこからは駒組みで、菅井七段は美濃囲い、永瀬叡王は銀冠を目指します。
再び角交換から打ち直し合い
△7四歩に対して▲3三角成△同桂▲4六角と逆に菅井七段が飛車の小瓶を狙っていき、△7三角と永瀬叡王が受けます。
今度は菅井七段が飛車を睨む形で角を置けて、菅井七段の角のほうが強くなりましたね。
これを警戒するなら△7四歩は突かないほうが良かったですが、永瀬叡王としてもそれぐらいは織り込み済みだと思いますし、特に問題ないということでしょう。
菅井流棒金
菅井七段らしい金を繰り出していく指し方で、金で攻めていきます。
ソフトもこの構想を推奨していて、銀だと7八飛と寄れなくなるのがイヤだったみたいです。
永瀬叡王としては、7四の歩は受ける手がありませんので、△4三金右と銀冠を完成させましたね。
菅井七段は▲7七銀から銀も活用していきます。
逆棒銀に対する切り返し
菅井七段の逆棒銀に対して、△9五角と切り返していきます。
▲同銀は△8八飛成で飛車が抜かれてしまいます。
かと言って何もしなければ銀が取られてしまいますので、▲8五歩と受けました。
ここで角が引いたら、出てきた意味がありませんので、△8六角▲同飛と切る一手ですね。
△5六銀の両取りに▲8四角で角成りを見せます。
この角成りをどうするかでしたが、△8四飛▲同歩は自然と歩が伸びてきて、今度はと金ができてしまいますし、△7三銀で取りに行っても同じですね。
永瀬叡王は角成りは許して、△6五銀と金を取ります。
▲6二角成に△6一金と取った金を受けに使いました。
永瀬叡王らしい指し方ですね。
銀が狙われる駒に
浮いている銀が目標にされて、捕まってしまいましたね。
△5六銀は▲7五歩が銀取りと7四歩の桂取りを見せられて、苦しいです。
なので、△6四歩と支えました。
菅井七段としてもすぐに取る必要はないということで、▲7八馬から馬を使える位置に持ってきてから、取ります。
これで、駒損がなくなりましたので、馬を作っている分、菅井七段のほうがいいですね。
とは言え、ここからが永瀬叡王の腕の見せ所で、そう簡単には決めてを与えません。
大駒3枚の攻めをしのぎ、玉頭から反撃
菅井七段は馬を2枚作って、5筋から破ろうとしますが、△2六歩と玉頭を狙います。
▲同歩ですぐに何かあるわけではありませんが、玉頭が薄くなりますので、怖い意味があります。
桂馬が入ったら、△2七歩▲同玉△3五桂のような筋もありますので。
なので、菅井七段も安全に▲同飛と取りましたね。
△3六歩▲同飛△3五歩▲5六飛と3筋の位を押さえて、△2四香と玉頭に狙いをつけていきます。
▲5四馬△同飛▲同飛と一気に攻める手もありますが、角を渡す分、怖い意味もありますので、▲6六馬と菅井七段は着実に攻めていきました。
絶妙な垂らしの歩
▲7四歩の垂らしが絶妙でしたね。
△7二歩と受けてくれれば、▲5三歩△4三銀▲4四馬△同銀▲8一飛の金取りが受けにくいです。
なので、△4三飛と引いてうけましたが、▲5四飛と走れるようになります。
飛車を取って一気に攻めたいところですが、丁寧に丁寧に指していきます。
2筋を絡めて4筋から反撃
永瀬叡王の反撃もすごくて、何もできなさそうなところから手を作っていきます。
4筋から攻めて、2筋も絡めていきます。
△2七歩に▲同玉は△2六飛▲1八玉△2八飛成で詰みとなってしまいますので、▲同銀の一手で、△4七飛成と龍が作れます。
▲3八金△4三龍と引きつけて、▲3四飛と菅井七段も切っていき、いきなり激しくなりました。
2枚馬の硬さ
永瀬叡王は金駒を引き剥がして、菅井七段の玉を薄くすることに成功します。
ただ、2枚の馬が強くて、飛車も歩で止まってしまいます。
なので、今度は馬に狙いをつけて、△5五銀と打っていきます。
取れば、△7五飛成で馬を一枚剥がす狙いですね。
なので、▲6五馬上とかわしましたが、△6四金でさらに狙っていきます。
そこから、菅井七段が▲2三銀から一気に寄せにました。
投了図以下
ここで、永瀬叡王の投了となりました。
以下は△6三玉▲7三金△5二玉▲4三馬△5一玉▲4二銀△同銀▲同馬までとなります。
馬2枚作って大駒3枚の攻めですぐに決まってしまうのではないかと思いましたが、そこからの永瀬叡王の粘りがスゴかったですね。
それに対して、菅井七段も絶対に反撃されないような指し回しで、局面が良い時と悪い時の両方の指し方が分かるとても参考になる将棋でした。