第12回朝日杯将棋オープン戦本戦の糸谷哲郎八段と藤井聡太七段が対局した棋譜です。
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本局は角換わりになりましたね。
糸谷八段は早繰り銀にして、藤井七段も早繰り銀で対抗して、相早繰り銀になりました。
早繰り銀で早繰り銀に対抗するのも、最近増えてきていますね。
叡王戦本戦の渡辺明棋王vs広瀬章人八段でも相早繰り銀になって、ここまでは同じ展開になりました。
広瀬八段は△9四歩と飛車先を切ったときに▲9五角の筋を消しましたが、藤井七段は△5二玉と玉を上がりました。
先後同形ですが、同じ展開になると先に指す糸谷八段のほうが一手速いですので、勝ちになります。
なので、どこかで変える必要がありますね。
早繰り銀に対する継ぎ歩の切り返し
▲3五歩△同歩▲同銀に△8六歩▲8五歩の継ぎ歩。
早繰り銀に対してよく出てくる切り返しですね。
▲同歩ですと△同飛が銀と桂の両取りとなります。
なので、▲3四歩から2筋を切って攻めていきました。
取り込まれますが、▲8八歩で受けておいて大丈夫という判断ですね。
予想外の端を絡めた攻め
藤井七段は△9六歩と端から手をつけにいきました。
▲同歩△9八歩▲同香△8七角ですね。
手としては、アマチュア間ならありますが、プロ間ですとほぼ見ない手ですね。
何かしら切り返しがありそうで、指しにくい手ではあります。
アマチュア間であれば、間違えてもらえる可能性が高いですので、多少無理してでも攻めればなんとかなることも多いですが、プロ間ですとそうはいかないですからね。
そういう意味で、こういう手は指しにくいです。
ただ、藤井七段は読み切って、これで成立していると判断しましたね。
3五銀の形が悪いというのが1つあったようで、飛車を叩いていっても、8五まで吊り上げると銀に当たってくるのが、イヤですね。
ソフトもこの筋で成立しているというよみで、900点ぐらい藤井七段がいいようです。
ソフトは△9五歩に▲6六歩で互角という読みでした。
以下、同じ展開で△8七角と打ちますと、▲同歩△同歩成に▲6五歩と突いて、△同銀なら▲5五角と打って、△9二飛はと金が取れますので、浮くしかないですが▲9一角成と攻めあって、先手が勝ちます。
▲6五歩に△5五銀として、▲8四歩と垂らして、取ったら▲8五歩~▲8四歩で、△同と▲同銀△同飛▲8七歩と収めて、角と銀の交換ですので先手がいいです。
▲8四歩に△7八と▲8六銀で、どうかという感じです。
評価値は100点ぐらい先手がいいという判断で、全くの互角ですね。
6五歩と突いたことで、飛車の横利きが止められて、3五の銀に当たらなくなったのも大きいですね。
これを早指しで読むのは至難の業ですね。
8七角から攻められると読んだ藤井七段がスゴすぎますね。
味の良すぎる香打ち
解説の佐々木勇気七段も△8二香の筋を解説していましたが、8六飛と周る手を消しつつ8九金と龍取りの先手を取って受ける手も消して、攻める味のいい一手ですね。
▲8三歩から叩いていきましたが、▲8五歩に△8八銀と打って、金をはがしにいきました。
香は取られてしまいますが、まだ攻められる手はありませんし、香は取られても問題ないですね。
どれを取られても痛い十字飛車
糸谷八段は飛車をぶつけて交換しにいって、藤井七段も交換に応じて△3六飛の金銀角取りの十字飛車。
どれを取られても痛いですが、金を取られるのが一番持たないでしょうか。
感想戦では▲4三角成△同金と切る筋を行っていましたね。
▲3七香と打てば、金銀は取られずに済みます。
本局は▲8二飛と攻めあいにいきまして、△7二金打とすれば飛車取りの先手を取れますが、先手を取る必要もないということで、△7二桂と安い駒で合駒しました。
後は△3八飛成から寄せにいきました。
投了図以下
以下、▲6五玉△6四歩までですね。
終わってみると、藤井七段の完勝で糸谷八段になにもさせませんでしたね。
ただ展開的には、手を作られると一気に悪くなってしまいますので、藤井七段もかなり慎重だったと思います。
インタビューでも、勝ちを思ったのが最後と話していましたので、何かあったらすぐに悪くなるとは感じていたのではないでしょうか。
それでも指し切れるのが藤井七段ですし、朝日杯2連覇も見えてきましたね。
朝日杯も非常に楽しみです。