第30期竜王戦挑戦者決定三番勝負 松尾歩八段vs羽生善治二冠の第3局の棋譜です。
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本局も横歩取りになりましたね。
竜王戦挑戦者決定三番勝負の3局とも全部横歩取りになりました。
横歩取り青野流の出だし
横歩を取って、△3三角に対して、▲5八玉とあがって、青野流の出だしになりました。
青野流の狙いは、▲3六歩~▲3七桂~▲4五桂と桂馬を使って攻めていくことですね。
これに対しては、同じように△5二玉とまっすぐあがるのも有力ですね。
羽生二冠は△4一玉と寄りましたね。桂馬が跳ねてきたときに、金にヒモをつけて、受けています。
桂馬を活用してくのは難しいということで、▲3六飛と引いて、普通の横歩取りに合流しました。
羽生二冠は中原囲いにしましたね。
最近は、5二玉型も増えてきましたが、4一に玉がいるのが昔からある中原囲いですね。
5二に玉がいたほうが戦場から玉が遠ざかっているという狙いですが、金が浮いているのが気になります。
名人戦にて佐藤名人が5二玉型の中原囲いにして、稲葉八段に両取りされて、負けた対局もありましたし。
どちらがいいかは難しい所ですね。
早繰り銀vs7三桂
松尾八段は銀を繰り出していって、早繰り銀のようにしました。
それに対して、羽生二冠は桂馬を活用していって、桂馬で攻めていく狙いですね。
同じように銀で攻めていった場合、先手の方が速いので、桂馬を使っていくことで、後手でも、先に攻めることができるわけですね。
ここから角交換になりまして、松尾八段が攻めていきました。
松尾八段が押しているように見えましたが△4五歩が厳しかったですね。
▲同角は銀が前に出れなくなって、攻めるのが難しくなります。
なので、▲同銀と取ったんですが、△5五角の両取りが決まりました。
▲7七桂と受けて、△1九角成と馬を作ることに成功しました。
切り返しの応酬~プロの技の掛け合い~
ここから松尾八段が反撃に出るんですが、羽生二冠の受けがその上を行きました。
ここで、△3三桂打として、▲同歩成に△同桂と桂馬が逃げつつ両取りをかけることに成功しました。
タダで取られるのと、駒が取れるのとでは、大きな違いですよね。
▲3五飛と寄って、△4五桂に▲同飛と馬に当てたんですが、△5六馬と角の方を取って、▲同歩に△2七角の両取り。
▲3三歩△同金に▲5五角と打って逆に両取りかけました。
△6四香と銀を守って、▲3三角成に△4五角成と飛車を取って、馬取りの先手を取りました。
▲4四桂と詰めろをかけて、△3三銀と馬を取ったら、▲3二金で詰みですので、△同馬▲同馬とするしかないですね。
こうなるとどうでしょうね。
互角か馬がいる分、ちょっと先手が指せる展開でしょうか。
ソフト評価値は、50点ぐらいで、全くの互角ですね。
決まったように見えて、切り返しもちゃんとあり、プロの対局って、ホントにすごいですよね。
△6七香成▲同玉に△6九飛とこれも厳しい攻めですね。
▲6八銀に△4九飛成と金が取れました。
次に△4七龍の王手馬もあるので、どうするかですね。
▲3三桂と打って、△同銀▲同馬は馬を呼び込んで怖いので、△5二玉と逃げましたが、▲1六角の王手龍が決まりました。
これには、△4三歩と打って、龍を取ったら馬を取るという狙いですね。
▲4九角と龍を取って、△4四歩と馬を取り返し、▲1六角ともう一回上がりました。
△3四歩と大駒は近づけて受けよ手筋で受けて、▲同角に△4三金とはじきました。
▲2五角と逃げて、△6九角から反撃。
▲7七金と逃げますが、△5八銀として、▲6六玉と玉を上げることに成功しました。
ここからもすごい攻め合いが続きましたが、羽生二冠が逃げ切りました。
以下、▲6六玉と逃げて、△6五歩と叩きます。▲同玉は△4七馬で詰みですので、▲5七玉と引くしかありません。
△4六金と上から押して行って、▲4八玉△4七金▲3九玉△2七桂▲2八玉△1九角に▲1八玉△2六桂までとなります。
横歩取りらしい激しい変化になって、技の掛け合いがすごい面白かったです。
これで、羽生二冠の竜王への挑戦が決まりましたね。
羽生二冠が竜王を取ると、永世七冠ということで、こちらも期待です。
ちなみに、途中で話した名人戦での佐藤名人と稲葉八段の対局で、佐藤名人が中原囲いにした対局はこちらになります。