第58期王位戦七番勝負の羽生善治王位と菅井竜也七段の第5局です。
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菅井七段の勝利となり、菅井七段が王位を獲得しました。
竜王、名人以外のタイトルを獲得すると、七段になりますが、すでに菅井王位は七段ですので、段位は変わらずですね。
八段になるためには、190勝か竜王獲得になります。
名人を獲得すると、いきなり九段ですね。
段位をあげるのもかなり大変ですよね。一度上がると落ちないからだと思いますが。
それはさておき、本局を振り返っていきたいと思います。
序盤:力戦三間飛車
すぐに金が上がられて、相掛かりなどの相居飛車の将棋を目指されるのかなと思いきや、▲2五歩に△3三角とあがって飛車先を受けましたね。
▲同角成△同金と形悪くしました。
ここから、△2二飛と向かい飛車にすれば阪田流向かい飛車ですが、△3二飛と三間飛車にしましたね。
この辺りは、さすが菅井七段という差し回しですね。
独創的で型にとらわれない差し回しは見ていて楽しいです。
ただ、この金をどうするか? ですね。遊んでしまうと悪くなるので、どういった構想にするかは難しくなります。
とは言え、菅井七段も研究済みでしょうし、方針も決っていると思いますので、特に問題ないと思いますが。
ここからお互い囲いあって、金はまっすぐ上げました。
押さえ込みに行く感じですね。意味合い的には魔界四間飛車に近いような感じでしょうか。
四間飛車、三間飛車の違いはありますし、魔界四間飛車の場合、角交換はしませんが。
似たような意味はあるのかな、という気はします。
中盤:飛車先を逆襲し、押さえ込みへ
△3三桂と跳ねて、2五の歩を狙いにいきました。
▲2四歩と突き捨てて、△同金の形にしました。
2五で取られるより、2四で取られたほうがいいという判断でしょうね。
押さえ込まれないようにする意味もありそうです。
ただ、こうなると羽生王位の方が指し手は難しいでしょうか。いかに押さえ込まれないようにするかを考えないといけませんので。
▲7六角と打って飛車を睨みましたね。
菅井七段は飛車先の歩の交換して、△3三飛と引いて、角道から逸れました。
▲5四角と取ってから、▲1八角と引いて、今度は玉を狙っていく方針でしょうか。
菅井七段は、飛車は押さえ込めたので、今度は玉頭を狙っていき、銀を進出させていきました。
ここから、7七の銀と交換できて、攻めの銀と守りの銀が交換できたので、この交換は菅井七段の方が有利ですね。
交換した後に、△5六歩の垂らし。
ここに垂らすのがいい手なんですね。
こういった歩の使い方はかなり参考になりますよね。
ほっといたら、△4五歩で銀が取られるので、▲同金と払って、△4五金とぶつけて、金もさばくことに成功しました。
終盤:激しい攻め合い
△4五金を▲同銀と取って、△3七桂成と攻めていきました。
▲2五飛と逃げて、△4五歩と銀と取り返しました。
▲同飛も考えられたでしょうか。4筋で龍を作れたほうがより働くということですが。
△4七成桂と寄られて、2段目に飛車が成られると苦しいですかね。羽生王位の玉は金一枚しか守りにいませんので。
ということで、▲3四歩と叩いて、△同飛に▲2三飛成と飛車取りの先手を取りながら龍を作ることに成功しました。
これなら、成桂がいて菅井七段は龍が作れないので、△3六飛と逃げました。
ただ、これが金にあたって先手を取られるのが嫌な所ですね。
羽生王位は馬を切って、龍が入って攻めにいきました。
△7一金と埋めて、▲7二歩。△同金は銀が取られますし、△同銀は▲6二銀と絡まれるのが嫌ですかね。
△同金に▲7一銀狙いですね。
ということで、△同玉と取って、玉を引っ張りだしました。
ただ、それ以上攻め手がなく、飛車を狙っていきましたね。
ここから、菅井七段の攻めが厳しかったです。
△5七歩と叩いて、▲同銀なら△6九角と捨てて金を取れば、寄り形ですね。
なので、▲同金と取って、△5六歩と楔を打つことに成功しました。
▲6七金と逃げて、△同銀成▲同玉として、△5七歩成と成り捨てていきました。
▲同銀は△4九角成から危ないですね。
とは言え、▲同玉でも△7八角と打たれて、ちょっと受けがなさそうです。
△5七歩成とされて、投了となりました。
▲同玉なら△5六銀と打って、▲6八玉△6七金▲5九玉△5八金▲同玉に、△6七馬と引っ張って、▲6九玉に△6八銀と頭に銀を打って詰みですね。
△5七歩成を取らずに▲7七玉と逃げると△9九馬▲8八角など合駒に△8五桂▲8六玉△7五銀▲同玉△7四香▲8五玉に△7五金までとなります。
これで、振り飛車党の菅井王位と久保王将の2人がタイトルを持ちましたね。
居飛車のほうが強いということもなくなってきそうです。
プロ棋士ももっと振り飛車党が増えたら面白そうですし、振り飛車党ももっと出てきて欲しいなと思います。