第5期叡王戦段位別予選九段戦の羽生善治九段と藤井猛九段が対局した棋譜です。
>
本局は藤井九段が得意の四間飛車で、藤井システムを見せていきました。
藤井システムに対しては、急戦に切り替える指し方もありますが、羽生九段は堂々と穴熊で受けて立ちます。
角がどこに逃げるか
△8五桂と跳ねて、藤井システムですね。
角がどこに逃げるかですね。
8八、8六、6八、5九どこも逃げられますが、6八と5九は9七桂成から端攻めを狙っているので、それを受けられるのかどうかになります。
8八は、銀がいきたいので、あまり指したくはないでしょうか。
ということで、▲8六角と上がりましたね。
角が退いたので、△6五歩と角筋で攻めにいきます。
▲8八銀△6六歩▲同金。
▲同銀は△4六歩をつけるようになりますので、同金の一手ですね。
端から穴熊を崩壊させる
端から一気に攻めて、穴熊を崩すことに成功します。
△8五歩と桂馬を取り返して、駒の損得は歩が2枚ですね。
歩2枚で穴熊を組ませないようにしたと考えれば、十分の成果ですね。
ただ、▲9五角が先手で、△7三桂と使わされて、まだまだ難しいです。
藤井システムは居玉のほうが硬い!
△6四香▲6七歩と受けさせてから、△5一玉と戻りました。
居玉は悪い形で、基本的には△7一玉と美濃囲いに入ったほうが良い形とされていますが、この場合は8筋、9筋が戦場になっていて、守り駒もありませんので、
5一のほうが硬いということですね。
ただ、一気に攻めにいきたいところですが、ここで守りに手を入れるのが、さすがですね。
2枚替えでも十分
△9四金▲7三角成△同銀▲9四香と角と金香の2枚替えになりました。
ただ、先手陣が崩壊しているので、駒損でも大駒のほうが価値が高いということですね。
△3九角の筋も見えますが、藤井九段は△6七角でしたね。
△3九角▲5八飛△6六角▲同銀△同角成はかなり駒も渡していますし、危ないでしょうか。
ソフトは△6七角か△3九角か△7五歩かという読み筋でした。
ただ少し苦しいようで、200点ぐらい先手がいいようです。
歩が入るかどうか
解説の中川八段は△8五歩が入ればいれたいとのことでした。
▲9五銀と逃げてくれれば、先手玉を弱体化させられますが、▲2三歩成がどうかですね。
△8六歩▲3三と△9七銀▲9九玉△8七歩成となったときに、どうなるかです。
ソフトは先手が勝ちという判断で、1800点ぐらい先手に振れていました。
藤井九段は△3九馬と飛車を取りにいきます。
飛車は逃げていられませんので、▲2三歩成△2八馬▲3二と で勝負ですね。
先手玉にどう迫るか?
と金で迫っていき、成香がいるとはいえ、6筋にまだ逃げ道がありますので、どうするかですね。
▲6五香と逃げ道をなくしましたが、△8六歩で先手玉はまだ寄らないということで、勝ちになったようです。
感想戦でも指していましたが、▲4二銀なら勝っていたようです。
以下、△6二玉▲6五香△6四桂▲8三成香△6三金▲6四香△同飛▲6五桂。
△8六歩は▲5三銀成△同金▲7三桂成△5二玉▲4二金△同角▲同とで詰みとなります。
なので、△6五同飛と取るしかなく、▲同歩と取った局面もまた詰めろで、△8六歩と取る手が入りません。
4二銀と6五香が逆になっただけで、8六歩が入って、苦しくなったようです。
角一枚の守りで詰まない
飛車金銀と持っていて、詰みそうですが、角が良く効いていて、詰みません。
怖い筋としては、▲4三金△同玉▲4四飛ですね。
△同玉は、▲3四金△5五玉▲5六歩△5四玉▲4三銀で詰みとなります。
ただ、△3三玉とかわす手があり、▲3四金△2二玉で、▲4二飛成が△同角と取れますので、これ以上迫る手がありません。
ということで、▲2二飛から打っていきましたが、これも詰みがなく、藤井九段の勝ちとなりました。
投了図以下
ここで、羽生九段の投了となりました。
以下、迫るのであれば▲3二飛成ですが、△9七銀▲8九玉△8八飛▲7九玉△6七桂で詰みとなります。
受けるのであれば、▲8八玉で詰みはありませんが、△3八飛と打たれて、一手一手になります。