第60期王位戦挑戦者決定リーグ白組の中村太地七段と羽生善治九段が対局した棋譜です。
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本局は横歩取りになり、中村七段は青野流にしました。
第31期竜王戦 広瀬章人八段vs羽生善治竜王の第6局と同じような展開になりました。
羽生九段が飛車をぶつけて、飛車交換になりました。
再びこの展開にしたということは、ここから後手で良くなる変化があるということなんでしょうね。
これでまた後手の勝率が上がれば、プロ間で横歩取りが増えてくるということも十分ありそうです。
竜王戦では広瀬八段は▲3七桂と桂馬を活用していきましたが、中村七段は▲2四歩と垂らしました。
△2七飛から抜くような手も見えますが、▲3三角成△同桂▲3八銀ぐらいで問題ないでしょうか。
△2四飛成は▲4六角があるので、歩は払えません。
ということで、△2二歩と受けました。
▲8三飛と龍を作りにいって、△8二歩とこちらも受けます。
2回も土下座させられてイヤな感じもしますが、仕方ないという所でしょうか。
中村七段としてもポイントをあげられたので、無理はせずに落ち着いた展開になりました。
端を絡めて手を作りにいく
どこから手を作りにいくのか難しい将棋になりましたが、中村七段は端を絡めて手を作りにいきました。
△2三角と合わせて、▲3四歩で一歩取ったら2四歩で角が取れる形にしました。
△7六歩▲6五桂と手順に跳ねて、▲5三桂成~▲2四歩で角が取れる形ですね。
羽生九段としても忙しく、△7七歩成▲同金△8九飛と打っていきます。
また金を引くと、△7七歩で取られてしまいますので、▲7八銀と先手を取って受けました。
△7九飛成で7六歩を見せていましたが、▲2四歩とここで攻め合いにいきました。
角は逃げられませんので、△7六歩の一手ですね。
横歩取りらしい大乱戦へ
大乱戦になって、どちらが先に迫れるかといった将棋ですね。
感想戦で、△3七歩が入るかどうかというのもやっていましたね。
▲3二馬△3八歩成▲8九歩△同龍▲7九金とはじかれますが、△7八金と食らいつく手があって、難しいという感じでした。
▲8九金は△6九銀▲5九玉△5八香▲同金△同銀成▲同玉△4八金までの詰みです。
龍が取れないとなると、先手としてもイヤですね。
ただ、ソフトは△3七歩に▲7七角で後手がマズいとのことで、1200点ぐらい先手がいいとのことですので、大差になってしまうようです。
本譜は△2三同金▲同龍に△3七歩を入れました。
今度は▲7七角なら△6九角と打って、▲4八玉△3八歩成と王手王手で迫っていけるので問題ないですね。
中村七段は▲1二龍を入れてから、▲3七銀と手を戻します。
金銀の連結が外れたので、△6九角~△4七角成で金が取れます。
▲3七同桂ですと桂頭がキズになってしまいますので、どちらで取っても、イヤな形ですね。
玉頭から反撃
中住まいの弱点の玉頭を狙っていきました。
△6二金直の受け方が危なかったようで、▲5三香成△同金▲同桂成△同玉と精算して、▲4五桂で玉が引っ張り出されて、先手が良かったようです。
中村七段は▲4五桂とためて△4四銀としてから、全部精算しました。
こうなると、桂馬がない分、寄せにくくなってしまったでしょうか。
感想戦では、△4四銀に▲3五角とさらに足されるのが△5四桂と桂馬を使うしかないので、
イヤだったと羽生九段が話していました。
詰むや詰まざるやの大熱戦
終盤もかなりギリギリの詰むや詰まざるやの状態になりました。
ここで受けるのか攻めるのかですが、中村七段は▲4二龍と攻めていきました。
△同金は▲4五桂から長いですが、詰み筋があります。
なので、△6四玉とかわして、▲5六桂と捨てていきました。
△同歩と取って、▲6六香。△同桂なら5六桂と捨てた効果で、▲4六角が王手で入ります。
なので、△7四玉とかわしました。
▲6五金と迫っていきますが、打った金が守りにも働いてきて、寄らなかったですね。
最後は羽生九段が寄せきりました。
投了図以下
ここで、中村七段の投了となりました。
以下、▲8七玉△7九銀不成▲9六玉△8四桂▲9五玉△9四歩までですね。
最後の最後までどちらが勝つか分からない面白い将棋でした。