第60期王位戦挑戦者決定リーグ紅組の木村一基九段と菅井竜也七段が対局した棋譜です。
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菅井七段はゴキゲン中飛車にしましたね。
それに対して、木村九段は超速ですぐに仕掛けにいきました。
菅井七段は玉の囲いを優先したので、銀が立ち遅れているということで、▲4五銀と歩を取りにいきます。
先手が銀が出てくるのに合わせて、後手も4四銀とあがっておけば、この手はありませんが、菅井七段としては、この仕掛は問題ないということでしょう。
△2二角と引いて▲2四歩△同歩を入れてから▲3四銀と出ていきます。
そこで、△3三銀とぶつけたのが危ない手に見えましたが、どうだったでしょうか。
ここで銀が引いてくれたり、銀交換で収まれば後手としても満足ですが、▲2三歩が入れてから、▲3三銀成△同金▲2二銀と打たれます。
△3三同桂なら▲4一銀の割り打ちが入りますので、金で取るしかないですね。
2二銀を△同角▲同歩成△同飛で飛車先の逆襲を狙っていくのも考えられそうですが、▲3一角から馬が作れますので、先手としても十分手が作れそうです。
なので、△4二角と逃げて▲3三銀成△同桂となりました。
△同角ですと、歩成りは受けられますが、▲3四金から絡まれて、うるさそうです。
それよりはまだ、歩成りのほうが許せるという判断ですね。
また、桂馬も使えてきますので、菅井七段も反撃ができて、楽しみがあります。
木村九段の手堅い金打ちと菅井七段の鋭い攻め
角が出て飛車が狙われているので、▲4六金と手堅く打ちました。
攻め将棋なら▲2四飛と走って攻めにいきそうなところですが、4六金は木村九段らしい手ですね。
菅井七段は鋭く、△5七桂成▲同銀△5六歩と突いていきます。
▲同金は飛車が抜かれてしまいますし、▲同銀は△同飛で△同金ならやはり飛車が抜かれてしまいます。
ということで、5六歩は取れないですね。
そこで、▲4二と と飛車に働きかえていきます。
角で取っても飛車で取っても5六の歩が取れるようになります。
それですと、攻めの手がかりがなくなってしまいますので、△5四飛と避けます。
振り飛車党らしい手渡し~反撃
▲5五香と飛車取りの先手を取りつつ飛車と角の効きを止めました。
それに対して、じっと△7二金と囲いを完成させます。
金取りも飛車取りも無視して、7二金とあがるのが振り飛車党らしい一手ですね。
金を取ってしまうと、飛車を取られてしまいますし、飛車が逃げればと金を外されてしまいますので、ここで囲いを完成させるのが、最善です。
▲5四香なら△4六角が2四飛を防ぐつつ飛車取りの先手で、かなり味良いです。
なので、木村九段としても飛車は取りにくいです。
そこで、▲4三と と、と金を活用していきます。
△5七歩のたらしもいやらしい手ですね。
木村九段に攻めを催促して、▲5三と△同飛▲同香成と香成りを作ります。
△4六角には▲1八飛で受けます。
△5八銀から精算して、菅井七段の攻めにも迫力が出てきます。
ソフトは△5七歩に▲5三と があまり良くないという判断で、しっかり▲5九歩と受けることを推奨していました。
ここで土下座するのはかなりイヤですが、それで後手からの攻めが難しかったみたいです。
菅井七段の鋭い攻めvs木村九段の粘りある受け
飛車と馬に挟まれて、かなり危ない状況ですが、ここからが木村九段の真骨頂ですね。
△5八銀に▲3七玉と逃げて△2七金と使わせることに成功します。
▲4六玉と上に逃げます。
△4八飛成と攻めは続きますが、▲5五玉と玉の大脱走ですね。
そこからうまくかわして、入玉に成功します。
自玉を安全にしてと金攻め
ここまで来てしまうと、先手玉はもう寄らないですね。
ただ、こうなると危ないのが後手玉ですね。
と金を作られてひたひたと寄ってきますので、菅井七段が入玉ができるかどうかになります。
とは言え、菅井七段もトップ棋士ですので、そう簡単に寄せられず、入玉に成功します。
ここが最後の寄せられるかどうかの局面ですね。
木村九段は▲3九飛と捨てていきます。
△同龍▲同馬となって、△同玉なら▲4九金△2九玉▲3九飛△1八玉▲1九香△2七玉▲1六銀までの詰みです。
なので、△1九玉がギリギリの受けで、これで詰まずにお互い詰まない形となりました。
後はお互い成り駒を作っていき、駒が木村九段のほうが多いですので、木村九段の勝利となりました。
投了図
ここで、菅井七段の投了となりました。
序盤はうまく木村九段が攻めて、そこから菅井七段のさばきが鮮やかで、序盤は居飛車と振り飛車の持ち味が存分に発揮される展開になりました。
そこから、木村九段の持ち味の粘りと菅井七段の鋭い攻めの応酬が見られて、お互いの持ち味が存分に発揮される展開で、面白い将棋でした。