第77期順位戦B級1組13回戦の行方尚史八段と木村一基九段が対局した棋譜です。
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本局は横歩取りになりましたね。
青野流を受け切るのが難しいということで、プロ間では少し減ってきていますが、千駄ヶ谷の受け師・木村九段は堂々と受けに行きました。
行方八段は当然青野流で攻めにいきました。
両取りの受け方
木村九段は△5二玉~△7六飛と青野流に対して、良くある返しですね。
△7六飛に▲7七角△同角成▲同桂に△5五角の両取りをかけた局面ですね。
一見これで困っているように見えますが、これも定跡内で▲2二歩が切り返しになります。
△同銀△同金は飛車が成れますので、取るなら△同角しかないですね。
その場合、両取りが消えますので、▲6八銀と受けておけば問題ありません。
無視して、△7七角成と攻めてきた場合は▲同金△同飛成▲7八歩で追い返して、△2一歩成で先手が良いです。
△1九角成も同じですね。▲2一歩成で次の▲3一との銀を取る手を見せて、十分です。
穏やかに指すなら△2二同角と歩を払う手ですが、2枚の桂馬が飛んできて、受ける展開になりやすいですので、△3三桂と、と金は作らせて攻め合いに持っていきました。
切り返しの応酬
△4五桂と木村九段が攻めてきた手に対して、▲6七角の飛・桂両取り。
これで続かないように見えますが、△6六角が切り返しですね。
次に5七角成と8四角と飛車を取る手を見せています。
飛車を取れば、△5七角成~△8四馬と馬を作られて飛車が取られますので、先手が悪くなります。
なので、▲6八銀と5七の地点を受けて、飛車の取り合いとなりました。
こういった切り返しの応酬が横歩取りの醍醐味で、技の掛け合いが面白いですよね。
△8九飛とすぐに打っていき、▲7九飛△同飛成▲同金と金を引かせます。
そして、△7四飛の角取り。
単に△7四飛ですと、▲6七角と桂取りの先手を取られつつ逃げられてしまいます。
7九金の形にするとこで、▲6七角は△5七桂成▲同銀△7七飛成が入りますね。
なので、▲5六飛と行方八段も飛車を打って対応します。
横歩取りらしい華々しい展開
△5五銀と捨てて、▲同飛△7六飛と角を取ります。
木村九段は先に角を切っていますので、桂損の攻めですが、十分手になるということですね。
△3四金に▲3七桂と受けたのが危なかったようで、△2三角なら良かったようです。
同じように△5五銀から攻めていくと金取りが残ってしまいますので、負担になります。
なので、△3三金と引くしかなく、▲4五角成と馬を作っておいて少し先手が指せるようです。
ただ、▲3七桂でもそこまで悪くなるわけでもなく、ほぼ互角ですが100点ぐらい後手に傾きました。
馬捨てからのと金攻め
木村九段は馬を取らせて、△3七歩成と攻めていきます。
▲同金は△3八歩で▲同金でも▲同銀でも金で詰みとなります。
そこで、▲5九角という受けもあるようですが、苦しいことに変わりはないですね。
▲4二とを一回入れてから、△5九銀で受けて、行方八段の必死の粘りで、なんとか龍を追い返します。
ただ、木村九段の厳しい攻めで受けが効かなくなりました。
投了図以下
最後の△2七金も素晴らしい一手ですね。
△3八金打までの詰めろですので、▲同歩しかなく△同歩成で詰めろが解けないですね。
3八になにか打てば詰めろは消えますが、銀を取られてから、△6八龍というカッコいい決めてがありますね。
取れば頭金ですので、これでほぼ受けがありません。
ということで、これで木村九段のA級復帰となりました。
ついに木村九段がA級に戻ってきましたね。
受けだけでなく、攻めの鋭さも増していて、A級での対局が楽しみです。