第40回日本シリーズJTプロ公式戦の藤井聡太七段と三浦弘行九段の対局した棋譜です。
>
本局は横歩取りになりましたね。
横歩取りは、先手のほうが勝率が高いということで、プロ間では指す棋士が少なくなってきていますが、藤井七段は角換わりのほうが得意とされていますし、横歩取りのほうが勝ちやすいと読んだんでしょうね。
▲3四飛に△3三角が多いですが、△4一玉と寄りましたね。
三浦九段といえば、△3三桂も良く指されていましたが、それでもなかったですね。
咎めるのであれば、▲2四飛でしょうか。
3三角であれば、2四飛はないですからね。
ただ、三浦九段のことですし、それも読んでいるでしょう。
藤井七段は▲5八玉とあがりました。
次に△8八角成▲同銀△4五角の筋もありますので、それを受けた意味もありますね。
横歩取りらしい空中戦に
三浦九段は飛車を回って、空中戦になりました。
ここで、▲8三角から馬を作ることもできますね。
ただ、手持ちの角と盤上の馬とどちらがいいかは難しいところです。
藤井七段は▲8四飛と回って、飛車を回り合いました。
△8二歩と打たせられるので、これも自然ですね。
そこで▲7二歩があったかどうかですね。
△同金▲3五角の筋ですね。△2五飛▲5三角成で、馬が作れます。
解説では、△4二銀▲5四馬△7五角で、危ないとのことでした。
藤井七段は▲3八金とあがって、じっくりとした戦いになりました。
藤井七段の攻めをなくす
△2四歩はすごい手でしたね。
飛車先を止めてしまって、使いにくくなってしまいますので。
それでも、2五桂からの攻めをなくしてしまえば、良くなるという判断ですね。
藤井七段は▲9六歩を端を伸ばしていき、三浦九段は△5四角から3六歩の桂頭を狙っていきます。
これを受ける手はありませんので、桂馬は取られても、その間に手を作るしかないですね。
桂頭を攻め返す
藤井七段も同じように桂頭を狙っていきます。
最初の方針通り、攻めをなくすのであれば、△6二桂でしょうか。
▲7四歩△同桂が両取りになりますので、取り込むことはできなくなります。
三浦九段は鋭く△5四桂と銀を狙っていきます。
銀が逃げると、7五銀と歩を払われて、攻めがなくなってしまいますので、▲7四歩と取り込んで、勝負ですね。
銀を放り込んで、無理やりこじ開ける
藤井七段は▲7三銀と放り込んでいきました。
あまりこういった手は好まなそうですが、他に手が難しいということでしょうか。
△同銀▲同歩成△同金▲7六飛と回ります。
△7五歩▲同飛△6四銀としっかり受けるのもあったみたいですが、△7四歩で▲8二角は許しましたね。
馬は作られますが、金が出て、飛車を押さえ込んでいきます。
上部脱出して、反撃
飛車は取られてしまいますが、上部に脱出して、桂馬と銀が成って、反撃します。
角も玉を睨んでいますので、かなり怖い形ですね。
▲7九玉と逃げて、△4五玉と三浦九段も逃げます。
入玉されると捕まらなくなってしまいますので、▲3七金打からなんとか追い返しにいきます。
ただ、成銀と成桂が手厚いので、そう簡単には追い返せないですね。
手番のものすごい重要な終盤戦
終盤は駒の損得より速度と言われますが、それが良く表している終盤になりましたね。
とにかく手番が大事なので、△5七銀▲同玉と捨てて、△5六香▲6八玉△3八飛から手番を握り続けます。
ただ、即詰みはありませんので、どこかで必至か必至に近い詰めろをかけて、勝ちに行く感じですね。
そのときに頓死しないように、自玉の安全度も見る必要があります。
ということで、△6六金でほぼ必至をかけました。
ここで、後手玉が詰むかどうかですね。
駒はたくさん持っていますが、盤上に残っている駒はほとんど三浦九段の駒で手がかりがありませんので、詰みはないですね。
藤井七段は桂馬を外して、なんとか耐えようとしましたが、持たなかったですね。
投了図以下
△7七角成で、藤井七段の投了となりました。
△7八金▲9八玉△8七馬までの詰めろですね。
▲7九金で詰めろは回避できますが、△7六桂と足されて、一手一手です。
なので、投了やむなしですね。
すごい白熱した将棋で、早指し戦とは思えないぐらい良い将棋でしたね。
特に横歩取りは手数が短くなりがちですし、その中でこの長手数というのも良いです。