第77期名人戦七番勝負第1局の豊島将之二冠と佐藤天彦名人が対局した棋譜です。
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初日は角換わりになりましたが、千日手になって15時を過ぎたということで、2日目に持ち越しとなりました。
なので、実質1日制のような感じですね。
指し直しの本局では横歩取りになり、豊島二冠は青野流にしました。
横歩取りでは、この青野流を受けるのが厳しいということで、後手番がどう対策するかとなっていますね。
横歩取りの後手番を得意とされている佐藤名人が青野流に対してどう指すのかは楽しみでした。
第31期竜王戦第6局 広瀬八段vs羽生竜王の展開に
▲3六歩に対して△7四飛と飛車をぶつけて、第31期竜王戦 広瀬八段vs羽生竜王の第6局と同じ展開になりました。
ここまでは竜王戦と同じですね。
広瀬八段(当時)は、▲6五桂と激しく行きましたが、豊島二冠は▲8八歩と受けました。
豊島二冠らしいといえばらしい手ですね。
豊島二冠は手堅い手を好まれますので。
そこで△6四角▲3八銀△2八飛と大駒を打っていきます。
次に3七角成と桂馬がタダで取られてしまいますので、▲6九玉と逃げました。
これにより、△3七角成は▲同銀と取れるようになりました。
阿久津八段もビックリな佐藤名人の一手
△8八銀は解説の阿久津八段もビックリされていましたね。
金銀バラバラで、形があまり良くないので、その辺りのことを話していました。
△7八銀であれば、金銀の連結がよく自然な一手ですが、▲6五桂~▲7三歩と銀を狙われる手があって攻められやすいということで、8八銀にしたのではないかという話でした。
豊島二冠もすぐには攻められないということで、▲6八銀と一手ためました。
手厚いとみるか攻めがないとみるか
この辺りはどうだったでしょうか。
飛車が成って5筋に周って玉頭は手厚くなりましたが、龍が戻ってしまったので、攻め手にかけるような気もします。
大駒を手放した割に戦果がないような気もしますが、どうですかね。
2筋に龍が残っていれば、いつでも2八龍と入って香が取る手を見せられますので、攻めやすそうですが。
佐藤名人は受けが得意ですので、佐藤名人の棋風といえば棋風なのでしょうか。
△5四龍に代えて、△3三桂で4五桂を消すぐらいではダメだったんですかね。
豊島二冠からすると、攻めがなくなったので、少し楽になったのではないかと思います。
手順の難しい局面
豊島二冠の攻める番になって、ここで何から指すかが難しいところですね。
狙いは5三の地点の玉頭で、4五桂と3五角で、玉頭を一気に攻める手になりますが、どちらから指すかが難しい問題ですね。
▲4五桂は△1九角成の変化が生まれますし、▲3五角は△同龍の変化が生まれます。
豊島二冠は▲3五角を選びましたね。
龍が逃げてくれれば、▲4五桂でいいですが、△2七歩成も△同龍もありますね。
感想戦で△2七歩成は▲4五桂に△4一桂と打たされるのがイヤだったと佐藤名人は話していました。
ということで、△3五同龍と取っていきます。
次に4五桂と跳ねられると攻めの形ができますので、△4四歩と桂馬を飛ばせなくします。
歩の裏側の飛車
香を持ったら歩の裏側を狙えといった格言もありますが、それと同じで歩の裏の飛車も受けにくいですね。
桂か角を使うか△3一金で我慢するかですね。
▲2三飛成なら空成りですし、次に狙いもありませんので、△2七歩成で攻め合いに持っていけそうです。
なので、▲4四飛と取って4五桂を狙っていくでしょう。
せっかく突いた歩を取られて嬉しくないですが、飛車を打たせたとみて、どうかですね。
佐藤名人は△2二角と歩を守りました。
ただ▲同飛成△同金▲3四角と一気に攻め込んでいきます。
一撃必殺の5五銀
▲5五銀のタダ捨てが厳しい一手でしたね。
△同角と取るしかないですが▲4三歩△3一銀▲5三桂成と玉の頭に成桂を作って、受けがありません。
投了図以下
▲8一飛で佐藤名人の投了となりました。
▲6一飛成△同玉▲6二金までの詰めろで、受けるなら△7一銀とかですね。
ただ、▲4二歩成△同銀▲5一角成△同金▲7一飛成とボロボロ駒を取られて、一手一手です。
佐藤名人でも受けきれずにかなり横歩取りの後手番は難しいのが伺えます。
とは言え、まだ結論が出たとは言い難いですし、まだまだ分からないですね。
名人戦も長いですし、もしかしたらまた横歩取りが現れるかもしれませんので、それも楽しみです。