第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負の羽生善治棋聖と豊島将之八段の5局の棋譜です。
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棋聖戦の最終局で、勝ったほうが棋聖となる対局ですね。
お互い負けられない中で、選んだ戦型は角換わり腰掛け銀でした。
第1局、第4局と指されて、角換わりは3局目ですね。
定跡通りに進んでいきましたが、38手目で、豊島八段が面白い手を指しましたね。
△4一飛。
桂馬を絡めて4筋から攻められるので、予めそれを受けたのですね。
▲7九玉△4四歩▲4五歩とすぐに仕掛けていきます。
△同歩▲同桂は飛車が周った意味があまりありませんので、△5二玉と飛車道を通します。
▲4四歩△同飛が金取りに当たるので、▲4七角と受けました。
豊島八段が右玉にした際にも攻めの拠点になりますし、桂頭も睨んでいて、この角は活きやすいですし、打っておいて損はないですね。
△4一飛▲7五歩と桂頭を狙っていきます。
△同歩▲7四歩は桂馬が取られてしまいますので、△6三金と受けました。
金を吊り上げて、▲5五銀と角道を通して、金取り。
金を取った手が王手になりますし、8三角成も受かりませんので、金と銀の交換はできないですね。
ということで、△6五歩と受けて、▲4四銀△同飛と銀交換になりました。
ソフトはこの▲4四銀を評価していなくて、▲5四銀△同歩のほうがいいようです。
玉頭が薄くなるので、飛車先を重たいままにできるからということでしょうか。
なかなかこの違いは難しいですね。
△8六歩と突き捨てていきました。
これを▲同歩と取るのか、▲同銀と取るのか、非常に難しいですね。
矢倉は▲同銀で取るのが8割方正解とは言われていますが、後の2割をどう見極めるのかが分かりにくいです。
本局▲同銀であれば、△5五銀と出て、6六と4六に出る手を受けるのが難しくなります。
なので、▲同歩と取りましたね。
ただ、矢倉に対するよくある攻めの△8六歩。
▲同金は玉の守りから離れて、悪形になります。
ということで、▲3五歩から攻め返していきました。
羽生棋聖はと金を作って攻めにいき、△8八銀と豊島八段は打ち込んでいきました。
▲6八玉か▲同銀かだったのですが、▲同銀と取って、△同歩成▲同玉。
△7七歩▲同金△7六歩と叩いていきます。
金が逃げれば、銀が出てきて、拠点が怖いです。
ということで、▲同金と取って、△6七銀▲8七銀と羽生棋聖が受ける展開が続きます。
全部払って、△7五歩と叩いていきます。
銀が逃げれば、△6六歩で次の歩成りと6五角の飛車取り詰めろが残ります。
なので、▲同銀と取り、△6七角。
これで、かなり苦しいですね。
△8七歩もかなり厳しいですね。
玉が逃げれば銀が取られてしまいますので、▲同銀しかありませんが、△同銀成。
▲同玉なら△6五角の王手飛車もありますし、△7八角打から詰みます。
ということで、▲同桂△7八金▲9八玉△8八銀と腹銀。
玉の横に打つ銀を腹銀と呼ばれていますね。
王手ではないのですが、玉の動きを縛る寄せの一手です。
ここで、羽生棋聖の投了となりました。
以下、▲同桂△7七角▲9八玉△8八角成までとなります。
豊島棋聖の誕生となりました。
ついにタイトルに手が届きましたね。
タイトルも1冠ずつになり、過去には1度だけでなっただけで、これで2回目となります。
また、以前は7冠でしたが、8冠に増えてから、1冠ずつになるというのも、すごいですよね。