居飛車同士の角換わり戦は、棒銀・早繰り銀・腰掛け銀が有名ですよね。
これらはじゃんけんの関係にあって、棒銀は腰掛け銀に強くて早繰り銀に弱く、早繰り銀は棒銀に強くて、腰掛け銀に弱い。
そして、腰掛け銀は、棒銀に早繰り銀に強くて、棒銀に弱い。
といった感じですね。
ただ、腰掛け銀が一番強いよねということで、今は腰掛け銀が主流になっていますよね。
そこに割って入ろうとソフトがやり出したのが、4五桂急戦。
銀は遅いから、桂馬でどんどん攻め潰してしまおうという狙いですが、
これが成立するのかどうか。
プロ間でも、かなり話題になっているようです。
で、ソフトはどう考えているのか?
どういった時に成立して、どういった時には成立しないのか?
色々と調べてみました。
その結果……
棒銀には通用しますが、早繰り銀には通用しないようです。
肝心の腰掛け銀に関しては、ソフトも分からないみたいです(苦笑)
一手一手指すごとに、▲4五桂を推奨するんですが、指していってみると、意外と成立しているのかしていないのか微妙な感じになっていくんですよね。
なので、おそらくどの局面でも▲4五桂はできますし、後手としてもそれに対応もできます。
つまり、1つの戦法として考えればいいのではないかと思います。
どういうことかというと、棒銀でも早繰り銀でも、どういった局面でも指せますよね。
相手が棒銀をやって来ても早繰り銀をやって来ても腰掛け銀をやって来ても、一局の将棋になると思います。
じゃんけんのように必ず負けるということはありません。
それと同じで、4五桂急戦も相手が何をやってきても指せますし、一局の将棋になるということです。
なので、とにかく攻めたい! という場合は試してみてはいかがでしょうか。
棒銀に対しての4五桂急戦
まずは、棒銀に対しての4五桂急戦を見ていきたいと思います。
基本的な流れは、こういった感じですね。
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後手は棒銀に対して、桂馬がすぐに跳ねて、銀に当たってきますから、こちらのほうが速いですね。
ただ問題は居玉の場合、棒銀の方が速くなりますが、それに対しても4五桂急戦はできますので、ご安心を。
それに関しては、後ほど紹介しますね。
まずは、こちらの最終局面。
銀取りの先手なので、受ける必要がありますね。
△2二銀か△4四銀ですが、△2二銀の方から見ていきたいと思います。
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△2二銀と銀が退いたことで、2筋の歩を交換できますので、▲2四歩と歩を交換しに行きます。
これが4五桂急戦の狙いですね。
△同歩の一手ですが、ここで▲同飛としてしまうと、その一手が特になんでもないので、△4四歩とされて、桂取りで焦らされます。
これで悪いわけではないんですが、2筋の歩が交換できただけで、あんまり得してないですよね。
そこで、▲同飛とは取らずに、▲6六角と打ちます。
この狙いとしては、まず△4四歩を防いでいますよね。
さらに、銀を睨むことによって、▲2四飛と走ったときに、▲2二角成△同金▲同飛成の先手になっています。
これを受けるのもかなり難しいです。
上記の棋譜では、△4四角としていて、これが正解なんですが、
例えばここで、無視して△9五銀と攻めてきた場合どうなるかというと…
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最終局面では、玉が上にあげられて、銀損していて、歩切れになっていますから、かなり痛いですよね。
その前の分岐としては、▲2四飛と走ったときに、△4四角と合わせる手もありますね。
これには、▲9六歩と銀を追い返します。
△8六歩であれば、▲同歩△同銀のときに、▲8三歩と飛車を叩きます。
△同飛であれば、▲4四角△同歩▲6四角という切り返しがあります。
△8五飛とした場合、▲2二飛成△同金▲4三銀と攻めます。
玉の逃げ場が難しいですよね。上は桂馬が効いているので逃げられませんから、3~5一に逃げるしかありません。
銀も質駒にありますし、5三に桂馬も成れますから、これは寄っていますね。
なので、▲6四角に対しては、△8二飛と引くしかないんですが、▲8三歩と抑え込まれて、これも後手が苦しいです。
ということで、▲2四飛と走ったときに、△4四角は間に合いません。
そこで、△2三歩と打って、▲3四飛と横歩を取ります。
ここで手抜く手も考えられますよね。
△8六歩とした場合、▲2二角成と角を切ります。
△同金の一手ですが、▲3一銀△5一玉と逃げます。
▲2二銀成として攻め合っても勝てるんですが、より安全に行くのであれば、▲8六歩と一度手を戻すのがいいと思います。
△3二金と逃げるのであれば、▲2二銀成△同金▲3一飛成が受けにくいですね。
△6二玉なら、▲2二龍と金を取りながらまた王手になりますし、△4一銀など合駒を打っても、▲5三桂不成がぴったりですね。
ということで、すぐに棒銀に行く筋は無理筋です。
局面を▲6六角と打った局面に戻します。
この局面では、△4四角と合わせるのが最善の受けになります。
▲2四飛と走って、△6六角▲同銀△4四歩と桂馬を取りに行きます。
後手としては、この桂馬が邪魔ですし、咎めたいですからね。
取りに行きたい所だと思います。
もう桂馬は助かりませんので、▲5三桂成として、最後の一働きですね。
△同玉と玉を引っ張り出せれば、十分な働きだと思います。
この後は、▲5五銀と銀を繰り出していってもいいですし、▲9六歩と一度受けてもいいと思います。
それでは、最初の局面に戻ります。
先ほどは、△2二銀を見ていきましたので、今度は△4四銀ですね。
△4四銀の場合は、このように進みます。
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△4四銀の場合は、△4四歩と桂馬を取りに来る筋が消えますので、穏やかな展開になります。
先手としては、2筋の歩の交換ができて満足といった感じですね。
また、△9五銀と銀が進出してきた場合は、▲8八銀と下がっておいて、問題ありません。
△8六歩と突いてきた場合は、▲5三桂成△同銀▲9五飛と銀を抜いてしまってもいいですし、
▲同歩△同銀▲8七歩△9五銀と追い返しても問題ありません。
その後は、▲7七桂から2枚の桂馬で攻めていく展開です。
居玉棒銀に対する4五桂急戦
続いて、居玉のまま棒銀ですぐに攻められた場合での、4五桂急戦を見ていきたいと思います。
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△9五銀と出られた所で、▲5六角が手筋ですね。
この狙いは、△8六歩▲同歩△同銀のときに、▲8三歩と打って飛車道を止めるためですね。
まだまだ難しいですが、これで受かっています。
なので、△8四飛と浮いたり、△7二角といった升田新手と呼ばれる手もあります。
それに対しては、▲4五桂と跳ねて攻めて行きます。
△4四銀の一手ですが、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲3四飛と進みます。
金取りなので、受ける必要がありますが、受ける手も難しいですね。
△4二玉であれば、▲5三桂成△同銀▲8四飛△同銀▲8二飛と十字飛車がかかります。
△8二飛と引いても、▲8三角成が入ります。
取れば、金を取られて、詰めろがかかるので、厳しいです。
また、△8四飛ではなくて、△7二角だった場合ですが、こちらも▲4五桂から同じように進みます。
同じように金取りなので、受ける必要がありますね。
△4二玉に、▲2四歩と合わせます。
△同歩▲同飛△2三歩▲5三桂成△同玉▲2三角成△同金▲同飛成と龍が作れて、先手優勢です。
早繰り銀に対しての4五桂急戦
次は早繰り銀ですね。
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基本的には棒銀と一緒ですね。
最後の所で若干違いが出てくる感じですね。
▲7七桂と跳ねたときに、▲6五桂と王手銀取りの先手ですので、△6四銀としたり、△4二玉と引いたりする必要があります。
その後は、△3四飛と横歩を取ってもいいですし、△5五銀と銀を活用したり、△2五飛や△2九飛と一度体勢を立て直す手も有力です。
どれも互角ですね。
桂損はしていますが、2筋の歩は切れていますし、後手玉が薄いですからね。
先手も指せると思います。
居玉早繰り銀に対する4五桂急戦
居玉のまま銀が出てきて、早繰り銀にされた場合、どう対応するのか?
見ていきたいと思います。
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△6四銀と早繰り銀で来られたときに、すぐに▲4五桂はできません。
なぜなら、銀が5三の地点を守っているからですね。
なので、手待ちの意味も含めて、▲4六歩と突きます。
△7五歩▲同歩△同銀と銀が離れたときに、▲4五桂と跳ねて反撃。
△4四銀の一手ですが、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩と打たれたときに、▲3四飛と横歩を取ります。
これが金取りにあたっていますから、飛車の動きに制限をかけていますね。
つまり、すぐに△8六歩はいけないということです。
△3三歩と飛車を取りに来るのであれば、▲4四飛車と飛車を切って、△同歩▲5三桂成と攻めていきます。
△4二玉には、▲5三桂成として、△同銀なら、▲5五角の飛車・香の両取りがかかります。
△同玉なら、▲3一角が厳しいですね。
角が銀まで睨んでいますからね。
さらに、△6二玉などと引いたら、▲3二飛成と金が取られます。
△3一金しかないですが、▲同飛成として、先手優勢です。
腰掛け銀に対しての4五桂急戦
やはり、メインはこちらでしょう。
腰掛け銀に対しては、どう対応するのか?
こちらを見ていきたいと思います。
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△5四銀と腰掛けられたときには、▲4六歩と桂馬を飛べる足場を作ります。
ここで、△4四歩と突かれた場合は、桂馬が飛べませんので、▲4七銀からこちらも腰掛けて、ゆっくりした展開ですね。
△4二玉に対しては、▲3五歩と突き捨てます。
これは先に突き捨てないと、取ってもらえないからですね。
このタイミングであれば、後手としても攻める手がありませんから、△同歩と取るしかありません。
そこで、▲4五桂と跳ねていきます。
これに対して、△2二銀であれば、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩に対して、▲5四飛と銀を取って、△同歩に、▲5三角と攻めていきます。
これが突き捨てている効果ですね。
突き捨てていない場合は、▲同飛と走ったときに、△4四歩と桂馬を取られてしまいます。
突き捨てていると、△4四歩と突かれても、▲同飛と取れるので問題ありません。
ということで、▲4五桂と跳ねたときに、後手としては、△2二銀と引くのではなく、△4四銀と上がります。
後は、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛と引いて、一局ですね。
先手の主張としては、飛車先の歩が切れていることと桂馬が5段目まで出て、さばけていること。
後手の主張としては、歩得ですね。
3筋の歩も伸びていますから、△3六歩とさらに突いて、拠点を作ることもできます。
まとめ
角換わりの棒銀・早繰り銀・腰掛け銀に対しての4五桂急戦について見てきました。
どれに対してもできますし、一局の将棋になります。
ただ、すぐに攻めきれるほど簡単ではないといった感じですね。
全部覚えるのは大変だと思いますので、ポイントだけ押さえておけばいいのではないかと思います。
棒銀と早繰り銀に対しては、▲4五桂と跳ねて、△2二銀には、▲2四歩△同歩▲6六角といった手ですね。
この▲6六角さえ覚えておけば問題ないと思います。
腰掛け銀に対しては、▲4五桂と跳ねる前に、▲3五歩△同歩と突き捨てる手ですね。
後は忘れたとしても、局面を見ていれば思い出すと思いますし、思い出さなかったとしても、急所を見つければいいので、なんとかなると思います。
なので、ぜひ試してみてください。